鰯雲たたされ坊主校庭に 葉
色のなき風放課後の遁走曲 葉
開口一番。
「殿 がいたら喜ぶのに」
森林公園の入り口でどちらともなく、言った。
春夏秋冬、良く連れて来た。野山の起伏を嬉しそうに走った。
休日は子供が多いから、平日に来た。今日も我々夫婦のような、リタイア組がたくさん来ている。
森抜けるやさしき秋の風なりき
秋興の日傘くるくる回し来る
衆目の中穴さがす蝮かな
穴惑い右往左往す遊歩道
男性が蝮がいるから、気をつけるようにと注意してくれる。
蝮を見るのは初めてのこと。
歩いていた人達が、寄って来る。跳びかかってくる元気もなさそうだ。一人が森林公園の事務所に、蝮のいることを知らせに走る。
薄紅葉三方窓のバンガロー
お手植えて幾歳小鳥来てをりぬ
秋の声ベンチも古くなりにけり
鰯雲消ゆ紫の空一瞬
紙飛行機丸く輪をかく紅葉晴れ
百葉箱の足のうづもる落葉かな
薄紅葉ふらふら落ちく竹トンボ