老人雑記

生活の中で気づいた浮世の事

      道祖神

2018-07-23 10:58:55 | 俳句


 バスの窓から、渓谷を見てゐて思い出したことがあった。
30年も昔のこと友人達と剣山へ登った。
(勿論、バスの旅)

 石鎚山は四国で一番に高い山。愛媛県にある。
二番目に高い山が徳島県の剣山で標高1955メートル。
石鎚山はそれより27メートル高く、近畿以西の西日本で一番高い1982メートルの山だ。

 その剣山へ登った時の事。
バスでリフト乗り場まで行き、リフトを利用すれば頂上までは歩いて、初心者でも楽に頂上を目指せるということでの登山?だった。
私達の乗ったリフトが乗り場から、20メートルくらいの場所からすごいスピードで逆走をしたのだ。
私が先に乗っていた?未だ乗っていなかった?そのところの記憶が曖昧だけれど、一番親しい友人がリフトから投げ出されて怪我を負ってしまった。

 救急車で麓の病院に運ばれることになり、一番親しかった私が同乗をし、蔦監督が率いる高校野球で有名な池田町の病院に搬送をされた。

 初めて乗った救急車はこの時。
サイレンを鳴らして山道を下ってゆくが、外の景色は見えない。
渓谷に面した細い道、曲がりくねった九十九坂と想像はするが、救急車の中からはサイレンの音のみでどこをどう走っているかは判らない。

 友の痛い痛いと言う声に頑張って、頑張ってと声をかけるしかなく、救急隊員に何度も何度も「病院に未だ着きませんか」と尋ねるばかり。
「もうすぐです、頑張って下さい」
この答えしか戻ってこない。何度、何度聴いたか、同じく優しくは応えてはくれるが、途中で私も気がついた。
「もうすぐです」と言う言葉には、この場合においてはどんな励ましより現に怪我をしている人、痛みに耐えている人には、もう少しで痛みから解放をされるという安心感の言葉に違いない。
「もうすぐ」「もうすぐ」と何度言った。
今度の「もうすぐ」は最後の「もうすぐ」だと患者は病院が本当の近いのだという、希望を与える言葉なのだ。
それが解ってからも、私は、友の代わりに「病院はまだですか?」とあえて聞いた。
30年の前の舗装も充分でない山道、時間にすれば、二時間半から三時間はかかったのだろう。友は痛かっただろう。

 友は骨折で完治をするまで半年間も入院を余儀なくされた。あの時、「出血」はしていなかったから、血を見るのと見ないのとでは、友の私も、少し心の内が変わったいたのかなどとも思ったことだ。

           

 石鎚神社への参拝道に道祖神があった。
秋の信濃路を道祖神を独りで巡った事があった。(独り、でには意味は無い)
その時の素朴な道祖神とは趣が違うが、道祖神を見ながら、私の忘れかけていた古い様々な事が甦ってきた。常には思い出したことも無い経験を、地味で彩りの無かった人生にも、こんな事があったのだなぞと、、、、。


       🍒     老鶯に聞き耳すます道祖神

       🍒     山あぢさい日照雨にぞめきをりにけり

       🍒     聞きとめてホトトギスともそれつきり

       🍒     老鶯や木ノ間かくれに迅る水

       🍒     黒々と光る巌や山清水

       🍒     山蛭か蚯蚓か汗の引きにけり

       🍒     六根清浄青峰忽ち雲隠れ

       🍒     大蛇ごと走り根苔が苔覆ふ

       🍒     涼味なる山の気登りきし甲斐よ

コメント (2)
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