きゃらめるぽっぷこーん

きっかけは韓国映画、今は興味の赴くままに観ます。mottoは簡潔に。radiotalkでラジオ配信始めました。

さよなら渓谷

2014年05月05日 | 日本
私たちは、幸せになるためにいっしょにいるんじゃない

20140505-11.jpg

先ずは余談ですが、かなこ(真木よう子)が働いている奥多摩温泉のもえぎの湯。
旦那が温泉好きなので、夫婦で何回も行くお気に入りの温泉なの。
かなこがサンダルと落とした吊り橋も行ったことあって、
知ってる場所が出てきて驚きました。

大森立嗣監督って「ゲルマニウムの夜」の監督なのね、いつか観たいと思ってる作品です。そして大森南朋の弟さんなんですね、知らなかった。

20140505-22.jpg

幼児殺人事件を取材する記者(大森南朋、鈴木 杏)が事件を追う過程で
隣の家の夫婦が15年前の集団レイプ事件の被害者と加害者であることがわかる。

復讐なのか愛情なのか、、、夫婦同然のように暮す不思議な愛の形は考えさせられるものがありました。
夫を犯人と繋がりがあるかもしれないと警察に密告した後の
ガラス越しの夫婦の日常的な会話(豆腐の賞味期限)は面白かった。

スポーツ選手あがり、という繋がりに意味があるかと思ったけどそうでもなかったですね。
記者の夫婦関係が修復に向かう過程も理由がいまいちだったかな。

痛ましい出来事から人生が変わってしまったかなこは気の毒としか言えないけれど、
全てがうまくいかない八方塞がりな人生は、正直ちょっと気が重くなりました。
何処にも進めるところがなかったのね。
だからと言っても、何があっても許しを得たい加害者の俊介に、究極に甘えているかのように見えたりもして
それも愛情の裏返しなのかな。

でも彼女は自分の人生に決着をつけたね。
最後に、かなこに出会わなかった人生と、レイプ犯としても出会った人生とどちらを選ぶと問われて、夫が答えないまま終わったことが印象的です。
きっと、彼はかなこを探し出すと思うよ。そう思えるラストで良かった。
被害者としてではなく、自分自身の名前で彼と出会ってほしい。

エンドロールで流れる真木よう子の歌が
今までの重苦しさを消してくれるかのような素朴で可愛い声で
「今日はなにかいいことがありそう」と歌っていて
その言葉に救われた気なれてよかったです。



さよなら渓谷  2013年    
監督:大森立嗣
出演:真木よう子、大西信光、大森南朋、鈴木 杏
原作:吉田修一

緑が生い茂る渓谷で幼児の殺害事件が発生し、容疑者として母親が逮捕される。隣の家に住んでいる尾崎俊介(大西信満)がその母親と不倫していたのではないかという疑惑が、俊介の妻かなこ(真木よう子)の証言によって浮かぶ。事件を取材する週刊誌の記者、渡辺(大森南朋)がさらに調査を進めていくうちに、尾崎夫妻をめぐる15年前の衝撃的な秘密にたどり着く。


そこのみにて光輝く

2014年05月05日 | 日本
そこのみにて光輝く  2014年  ☆☆☆☆☆
監督:呉美保
出演:綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也
原作:佐藤泰志

こんなにドラマチックに人間の匂いのする映画を作ったことに感動する。
三人の若手の役者もすばらしく、見つめあう主人公と千夏や、
千夏思いの弟も、海で洗われたようにきれいだ。 井坂洋子さん(詩人)



20140505-5.jpg

良かった、すごく良かった。
余韻がずっと残っていて頭から離れない。
今年ベスト3に間違いなく入る面白さでした。

「人間の匂いのする映画を作ったことに感動する」
本当にそうだと心から思う。

「ジョゼと虎と魚たち」大好きな作品なんだけど
あれからから10年が過ぎ、池脇千鶴って本当に素敵な女優になりましたね。
妙齢の女性らしく少し太った彼女の肉体の存在感が素晴らしかった。

20140505-3.jpg

特筆すべきは弟役の菅田将暉。
粗暴だが人懐こい大城拓児にしか見えない。
歯も黄色く変色しちゃって、本人が完全に消えている。
何だこの子!
今後彼の作品は全作品をチェックしようと思いました。
それくらいに素晴らしかった。

20140505-4.jpg

そして綾野剛、、、危く惚れそうでした。
インタビューで「作品に愛された」って話してたけど
なるほどねぇ、こういう作品に出会える俳優さんは幸せだよなぁって思ったもん。
良かったよ、背中が良かったよ(←そこ)
佇まいが最高です。
もともとガテン系に弱いワタクシにとってはたまらんものがあります。


綾野剛の背中、池脇千鶴の太もも、菅田将暉の髪、
高橋和也の尻、伊勢山ひろ子の二の腕、火野正平の眼、
函館の暗い夏に人が地を這うように生きていました。
冷えた体にひっそりと熱をはらんで。  大森立嗣(映画監督)


このコメントにすごい共感した。
やぱり名作には寄せられるコメントも名言になります。

20140505-2.jpg

貧しくどん底の暮らしで、あんな父親を持つ家庭は特殊だと言えるけど
どの親から生まれるか、どんな暮らしをして育つのか、遺伝を受け継ぐのか
誰だって間違いなくそのしがらみを持って生きている。
決して彼らが特別だとは感じなかった。

拓児が自分の家に達夫を誘い、姉ちゃんのチャーハンを美味しそうに食べる姿は
他人から見たらこんな暮しと思うんだろうけど、彼にとってはかけがえの自分の場所。
バカにしながらも家族を大切にしているところがたまらなかった。
だからラストでまた同じ過ちを犯した後に達夫に言った言葉は、
泣けて泣けてしかたなかったよ。

千夏の最後の行動は決して本気はなかったと思うよ。
自分の境遇に何かの形で決着とつけたいという気持ちの表れだと私は思う。

これからどんなふうに生きていくのかわからないけれど、
彼らは人間の輝きを決して失わない。
いつまでも余韻の残る秀逸なラストシーンでした。




仕事を辞めブラブラと過ごしていた佐藤達夫は、粗暴だが人懐こい青年・大城拓児とパチンコ屋で知り合う。ついて来るよう案内された先には、取り残されたように存在する一軒のバラックで、寝たきりの父、その世話に追われる母、水商売で一家を支える千夏がいた。世間からさげすまれたその場所で、ひとり光輝く千夏に達夫はひかれていく。



この作品はちゃんと愛されるべき人が愛されなくてやいけないと思う作品だと思いますし、世の中に人を愛することができない自分のことを愛することもできない人たちを抱きしめてあげられる作品になっていると思います。この作品と共に旅をして下さい。

綾野剛くんの舞台挨拶。まさにそんな作品だと思うので素晴らし過ぎて泣けます