きゃらめるぽっぷこーん

きっかけは韓国映画、今は興味の赴くままに観ます。mottoは簡潔に。radiotalkでラジオ配信始めました。

母と暮せば

2016年03月04日 | 日本
もう息子には会えない、と思ってました。



本日、日本アカデミー賞ですね。

優秀作品賞     「母と暮せば」
優秀脚本賞     山田洋次 / 平松恵美子 
優秀主演男優賞   二宮和也 
優秀主演女優賞   吉永小百合 
優秀助演男優賞   浅野忠信
優秀助演女優賞   黒木華
優秀撮影賞     近森眞史
優秀照明賞     渡邊孝一
優秀美術賞     出川三男
優秀録音賞     岸田和美
優秀編集賞     石井巌

「母と暮せば」ノミネート11冠おめでとうございます。





公開直後に観に行って、年明けでもう1回観に行っちゃいました。
どうしてももう1回観たかった。
坂本龍一さんのオープニングテーマと共にタイトルが現れただけで涙腺がダメ。
もう駄目なのよ、涙なくしては語れない、今でも予告編観ると泣けます。
戦争の惨さや原爆の恐ろしさというテーマを捉えた作品であるということはいわずもがなですが、私にとってファンタジーが勝っちゃって、その分切なくてたまりません。

会えないと思っていた息子に会えた物語。

母が小百合さんで息子がニノで、

二人の醸し出す雰囲気が恋人みたいで、

それだけで無条件降伏。


ある種ラブストーリですよ。

浩二が現れるたびに母伸子の顔がぱっと明るくなる。
たわいなく交わされる日常会話。
「元気だったの」
「ボクは死んでるんだよ、元気なわけなか」

「お兄ちゃんは死んですぐに会いに来てくれたのに、あんたは何で時間がかかったの?」
「だって一瞬のことで自分に何が起きたのかもわからなかった」
「そーだったわね、ごめんね」

「かーさんかーさんって、あんたは一生分のかーさんを言ったようなもの」

この親子は似たもの同士だったんでしょうね、
おしゃべりでちょっと天然で明るい。

ラストに賛否両論があるみたいで、
前向きなラストが良かったっていう意見は正当だと思うけど、
私の感覚はちょっと違ってて、
母としてはこれ以上幸せな人生の幕引きはないと感じちゃったのよね。
だって伸子さん安心してたじゃない、息子とずっと一緒にいられるって。

隣の奥さんが「たった一人で死んでいった」って悲しんでたけど、
すごく幸せそうな表情だった。

でもね、後からいろいろ考えて、幽霊っていう実態のない話。
あまりに寂しかった伸子さんが息子に会いたい気持ちが強すぎるあまりに
幸せな時間をまぼろしのように思い描いていただけなんじゃないかってふと考えてね。
そう思ったら尚のこと切なくてたまらなくなった。

つまりね、戦争はそうやって数えきれないくらいのたくさんの悲しみを作ったってことですよ。

最後に二人が手を取り合って天に向かっていくとき、
長崎の空の下、数えきれないたくさんの人の鎮魂歌。
見渡す限りの様々な方たちが、一瞬に人生に幕を下し、別れを経験したんだと思うと、
悲しみがものすごい大きなものとして押し寄せてきました。

計算されつくした山田監督の映像表現と坂本さんの音楽がマッチした珠玉の名作。
心から拍手を送ります。





◆母と暮せば  2015年  ☆☆☆☆☆
監督:山田洋次
出演:吉永小百合、二宮和也、黒木華、加藤健一、浅野忠信

1948年8月9日、長崎で助産師をしている伸子(吉永小百合)のところに、3年前に原爆で失ったはずの息子の浩二(二宮和也)がふらりと姿を見せる。あまりのことにぼうぜんとする母を尻目に、すでに死んでいる息子はその後もちょくちょく顔を出すようになる。当時医者を目指していた浩二には、将来を約束した恋人の町子(黒木華)がいた。