2008年に起きたイスラム過激派によるインドのムンバイ同時多発テロ。
占拠された五つ星ホテルの宿泊者とホテル従業員と、そしてテロリストの少年たちの群像劇。
こんな時期なので明るくて気楽なものを観たい気分でもありますしね、
実話を基にしている話なのでね、観始めるのに数日ちょっとためらった。
由緒ある豪華なホテルに鳴り響く発砲音と無慈悲に打たれて人がバタバタと倒れていく。
異教徒は人間ではないと教え込まれた幼いテロリストは容赦ないんだよね。
あぁ教育ってホントに恐ろしい。
あの場にもし私がいたら、逃げ延びる知恵があるだろうか、瞬時にして諦めるかもしれない。
もう全身ぎゅーーーーーっとしながら息を詰めながら観てました。
緊張感がものすごかった。
でも実話ベースとはいえ、エンターテイメント性もちゃんとあって面白いんですよね。
それぞれのキャラクタや背景がちゃんと垣間見える、本当に素晴らしかった。
ぎりぎりの状況の中でぶつかっても理解しあおうとしていて、ラストに希望と喜びがあることが救いです。
ホテルマンのアルジュンが仕事に出かけ、そして生き抜いて家に帰るという時間軸の物語。
テロリストたちも、貧困のなかで育ったゆえの無知で、洗脳でこの状況下にいることがわかる。
実家に電話してお金は振り込まれたかと聞くんだよね。お父ちゃんの声を聞いて泣くの。
彼らこそ家族を愛していて、自分を犠牲にしてでもこれが良いことだと信じてる、たぶん本質は素直でいい子たちなんだ。何より幼い。それが余計に辛くて悲しい。
たくさんの人が残虐に死んでいく物語だけど、描き方が優しいんだよね。
でもこんなことが現実に起きている。
それはなぜだろうと、深く考えてしまいました。
宗教の話は簡単ではない。
ホテル・ムンバイ (原題:HOTEL MUMBAI) 2018年 ☆☆☆☆☆
監督:アンソニー・マラス
出演:デヴ・パテル、アーミー・ハマー、ナザニン・ボニアディ
身重の妻と小さい娘がいるアルジュン(デヴ・パテル)は、インド・ムンバイの五つ星ホテル、タージマハルで、厳しいオベロイ料理長(アヌパム・カー)のもと給仕として働いていた。2008年11月26日、ホテルには生後間もない娘とシッターを同伴したアメリカ人建築家デヴィッド(アーミー・ハマー)や、ロシア人実業家のワシリー(ジェイソン・アイザックス)らが宿泊していた。