老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1199;伊能忠敬

2019-07-12 04:06:09 | 読む 聞く 見る
同門冬二著『伊能忠敬』日本を測量した男 河出文庫


ある日、妻ノブは忠敬に話す
やりたいことをやらないことが、いちばん体に毒だ(147頁)

忠敬は、その言葉に揺り動かされた。
学びたかった天文学、暦学の道に進んだのは、51歳のとき。
72歳のとき、大日本沿海輿地全図の作成に取りかかり、74歳で亡くなった。

天文学を学び、日本各地の測量を
自らの足で歩き正確な日本地図を作成した。
歴史の教科書では、簡単に「伊能忠敬は日本地図を作成した」としか記載されていない。

『伊能忠敬』の文庫を手にし
読み進めていくうち
老いても、自分にとり「やりたいことは何なのか」
本当にやりたいことをやっているのか、自問自答させられた。

伊能忠敬は、農民としても商人としても業績を残し、佐原地域のために本当に尽くされた人であった。
お金は、他者の幸福のために使う。

いやな仕事を先延ばしにしない
洗濯の順位は、まず急ぎの仕事から手をつける
急ぎの仕事が複数あるときは、自分のやりたくない仕事から手をつける(102頁)


伊能忠敬の仕事に対する捉え方であり、自分の心のどこかで「いやな仕事やいやな事」は先延ばしであった。

夜空に輝く星をみつめながら 天体の動きに比べれば、
人間の営みなどは虫のようなものだ(154頁)


伊能忠敬は病を抱えながらも日本各地を測量し、精密な日本地図を作成していった。
老い病んでも、彼は見て楽しい日本地図を作った。
楽しみながらやりたいことをやる。

義務感や追われたような仕事ではなく、
何のためにしているのか、そしてそれは楽しみながらやりたいことをやる。
いやな事を先延ばしない、ことも意識しながら、
躰が動けるまで生きねば、と感じた『伊能忠敬』の文庫本であった。