老い生いの詩

老いを生きて往く。老いの行く先は哀しみであり、それは生きる物の運命である。蜉蝣の如く静に死を受け容れて行く。

1206;老人は草取りにこだわる

2019-07-17 12:07:55 | 老いびとの聲
老人は草取りにこだわる

老人は
要介護認定を受けてもそんなことはおかまいなしに
長梅雨で伸びた草が気になりだし
草取り用の鎌を手をにし
自宅の敷地内や野菜畑の草取り作業に精をだす。

両膝に手をつき、「く」の字に腰を曲げ
よたよたしながらなんとか歩いている。
身の回りのことは思うようにできていないのだが、
草取りになると俄然、目つきや躰の動きが違ってくる。

水分を摂ることも忘れ
夕方になると「疲れた」、とぼやく。
草取りに夢中で水(お茶)は余り飲んでいない。
翌朝、熱発を起し、「デイサービスの利用は休み」の連絡が入る。

98歳の田美婆さん(要介護2)も、その一人。

老人の草取りは本当に上手で、
土の上は草葉一つ落ちていない。
爪のなかに土がしっかり入り込み、爪は二色模様。
デイサービスの入浴できれいになる。

田美婆さんは、「長生きし過ぎた、98歳だよ。早くお迎えに来ないかな?」、とつぶやきながら
自宅から100mほど先にあるクリニックへ
歩行器につかまりながら受診して来る。

大晦日、NHK紅白歌合戦を終えると、「ゆく年くる年」という言葉があるけど
90歳を越えた老人にとっては 「くる年、ゆく(逝く)年」なのかもしれない。