ヤブカンゾウ
高度な技能継承で知られる宮大工集団の棟梁がに聞いた。
首都圏のある造営工事に参加した技能集団の大工が仕事前に熱心に鉋を研いでいた。
それを見た別集団の大工さんが笑って云った「いまどき鉋を研ぐとは驚いた、替刃を使えば名人の切れ味が再現できるのに」
確かに替刃の技術が向上して多くの場面で刃物は替刃に席巻された感がある。
大工仕事はもとより、床屋、農作業、医学分野等
しかし と棟梁は続けた、使うほどに道具は手になじむ、使いこなして道具を体の一部にしなければ道具と云えない。
切れ味が落ちるたびに刃先を交換していたら、いつまでたっても道具を手になじませることはできない。
「替刃仕上げと、手研ぎ仕上げの削り面を見てその違いが判るのですか?」と率直な疑問をぶっつけた。
棟梁は「それは判らない、しかし指先に五感を集中して、表面をなぜれば違いは明らかだ」と返ってきた。