Mちゃん(高1):
「悲愴」ソナタの第3楽章、「なんとか最後まで行けました」とレッスンに来ました。学校も忙しいのに感心です。
ここ何回かは 一番最後のエピソードから後をレッスンすることが多かったので、今日は久しぶりに初めから弾いてもらうことにしました。
「えっとー」Mちゃんは譜面台に楽譜を広げていきます。
「ここは…いい…こことここも…いいかな…」とページをめくっていき、
「ここから。」と、最後の2ページだけが見えるようにして楽譜を広げました。
「へ〜、もうこっちの方は覚えたんだ!?」
「あ、はい…一応…」
すごいね。よく練習してるんだ
さっそく弾いてもらいます。
テーマの部分、なるほど良くこなれてきて、手の動きもなめらかになってる。
最初の頃すっごく苦労したコラール風の部分、そしてその後に続く右手・左手の素早い掛け合いの部分も、ためらわず堂々と弾いていて、よく練習したんだなあ、と思いました。
さすがに、終盤部分は譜面を確かめながらゆっくり、となりましたが、この調子なら、本番までには余裕で仕上がりそうです。
だがしかし… ん?まてよ?
暗譜で弾いている前半部分に、ちらほらと違う音が混じってたんだよ。
「もう一度、最初から弾いてみてね。所々に『アレ?』の所があったよ」
じゃ、もう一度初めからね。
「待って!ここ、違うよ」「ここ!」「ここも!」
今度はその都度止めて、間違った所にチェック。最初のうちは赤エンピツで、そのうちポストイットで。
「初めはちゃんと弾けてたはずだけど、暗譜して何度も弾いてるうちに、独自のアレンジが加わってきたね?ww」
「私、全部独自かも(^_^;)」
いい演奏するために、暗譜は欠かせません。
暗譜すると、ピアノの音色がガラッと変わってきます。
誰かが書いた楽譜を読みながら弾いている音ではなく、まるで自分の心の底から湧き出てきた音のようになるのです。
でも、繰り返し弾いているうちに手が慣れて、楽譜を見なくていい状態になったのは、本当の暗譜ではありません。
楽譜をよーく見て、その奥底に息づいているメッセージを読み取り、自分の言葉(音)で表現してこその暗譜なのです。
曲を弾いていて「暗譜した」と思っても、時々楽譜を見直して「独自のアレンジ」をしていないか、確かめるようにしましょう。
「アレンジ」が固定してしまうと、なかなか直らなくなって後で大変なのでね…