ヤマトシジミの初齢幼虫は何回も見てきましたが,孵化したてのものを見るとなると特別な感じがします。
というのは,ヤマトシジミは卵を葉の裏側に産み付けるので,孵化前後の様子をきちんと見届けるにはたいへんな苦労を伴うからです。それを見届けようと思っても,カタバミの葉は夜間は閉じてしまいます。いわゆる日周性です。それで確認ができなくなってしまうのです。葉を閉じるとぎゅっとかたく閉じていて,手で開こうとしても無理です。開けたかと思うと,すぐに元に戻ってしまいます。そういうところに産卵するのは,卵の安全をできるだけ確保する手だといえるのかもしれません。
こういうわけですから,とにかく,孵化確認のチャンスは朝から夕方までの明るい時間帯だけなのです。加えて卵がごく小さいため,並大抵な観察では確認しようがありません。
ところで,過日たまたま,三枚の葉に卵が一つずつ産付されているのを見かけました。それで「これは幸い」とばかりに孵化時をたのしみに待っていました。といっても,ときどきルーペで見る程度。
そして9月24日(水),つまり今朝のこと。一個の卵でなんだか黒いものが卵の中に見えてきたかなという感じがしてきました。しかしあくまでそれは感じであり,不確かです。30分ほどして再び見ました。びっくり! なんと幼虫が出終わっていたのです。それまで入っていた殻の脇にいるではありませんか。
こういうときはがっかりします。油断していた自分を叱るほかありません。小さなものが変化する時間は,いくら劇的な場面であっても,ピシャリとは推測できにくいものです。それを補うにはよほど注意深く,根気強く観察し続けなくてはなりません。しかし,今のわたしにその粘りがあるかどうかです。ヤマトシジミの孵化を観察するには,とにかく労力が伴います。