自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

孵化したばかりの幼虫

2014-09-24 | ヤマトシジミ

ヤマトシジミの初齢幼虫は何回も見てきましたが,孵化したてのものを見るとなると特別な感じがします。

というのは,ヤマトシジミは卵を葉の裏側に産み付けるので,孵化前後の様子をきちんと見届けるにはたいへんな苦労を伴うからです。それを見届けようと思っても,カタバミの葉は夜間は閉じてしまいます。いわゆる日周性です。それで確認ができなくなってしまうのです。葉を閉じるとぎゅっとかたく閉じていて,手で開こうとしても無理です。開けたかと思うと,すぐに元に戻ってしまいます。そういうところに産卵するのは,卵の安全をできるだけ確保する手だといえるのかもしれません。

こういうわけですから,とにかく,孵化確認のチャンスは朝から夕方までの明るい時間帯だけなのです。加えて卵がごく小さいため,並大抵な観察では確認しようがありません。

ところで,過日たまたま,三枚の葉に卵が一つずつ産付されているのを見かけました。それで「これは幸い」とばかりに孵化時をたのしみに待っていました。といっても,ときどきルーペで見る程度。

そして9月24日(水),つまり今朝のこと。一個の卵でなんだか黒いものが卵の中に見えてきたかなという感じがしてきました。しかしあくまでそれは感じであり,不確かです。30分ほどして再び見ました。びっくり! なんと幼虫が出終わっていたのです。それまで入っていた殻の脇にいるではありませんか。


こういうときはがっかりします。油断していた自分を叱るほかありません。小さなものが変化する時間は,いくら劇的な場面であっても,ピシャリとは推測できにくいものです。それを補うにはよほど注意深く,根気強く観察し続けなくてはなりません。しかし,今のわたしにその粘りがあるかどうかです。ヤマトシジミの孵化を観察するには,とにかく労力が伴います。

 


虫の目レンズはおもしろい(続)

2014-09-23 | 日記

昼下がり,虫の目レンズを持って堤防を散策していると,イネ科植物の長い葉にバッタの幼虫がちょこんととまっていました。なんと無防備なことか,とびっくり。天敵にでも襲われたらどうなるのか心配になります。

バッタの向こうには河川敷が広がって,山々が横たわっています。恵まれた自然環境のもと,すくすくといのちが育っていきます。 

 


陽が西に傾いて,空がなんとなく穏やかに感じられる頃,草むらでトンボを見かけました。セイタカアワダチソウの穂先につかまって,安心し切っている様子。びっくりさせては申し訳ありません。感づかれるとすぐ逃げられるので,慎重に慎重に近寄ってパチリ。 

 

 
陽が西に沈みかけた頃,川原に出かけました。なにか被写体がないかと思っていると,トノサマバッタが! しめた! そっと寄っていってシャッターを切りました。秋のすじ雲が遠望できます。 古い橋を車が渡っていきます。バッタはなにを見ているのでしょう。

 


川原に下りていく道にカワラバッタがいました。歩いていると,いろんなバッタがあちこちから飛び出します。道にいたバッタは,わたしにビックリして飛び立ちます。それで,よほど注意深く近寄らなくては写真に収めることができません。


 

空き地に生えた草に,キリギリスがしがみ付いていました。長い脚を持て余さないかと思うほどの後脚です。翅は小さくて飛翔型昆虫ではありませんが,ジャンプ力は見事なばかりです。

 


昼下がりのこと。同じ空き地で見かけたのがベニシジミ。真っ青な空に,白い家と花弁。紅がくっきり浮き出ています。


そこに,ミヤマアカネが現れて……。


秋晴れの日はこころがくすぐられます。この先,まだまだわくわくするような風景が待っていてくれそうです。 

 


アカタテハ,孵化の瞬間(続)

2014-09-23 | アカタテハ

一枚の葉に複数の卵があって,時を同じくして孵化するというのは,観察者・撮影者としてなんとも忙しいなあと感じます。しかし,たのしいひとときではあります。

卵上部が黒くなっています。誕生が近づいた兆候です。 


左側の卵の上部から,アカタテハの幼虫の頭部が見えかけました。間もなく生まれそうです。 


スルスルッと頭を出しました。 


出始めると,一気に出てしまいます。 


外気を初めて吸って,一服といったところでしょうか。その後,幼虫は去っていきました。

程なくして,右側の卵から幼虫が現れました。これら2個の卵は同じ成虫が産付したものかもしれません。 


小さな宇宙といってもよさそうな小さな世界は観察のたのしさで満ちています。  

 


アカタテハ,孵化の瞬間

2014-09-22 | アカタテハ

孵化はいのちの躍動を感じる瞬間です。

アカタテハのそれもまた,感動的です。ただ,感動的ということばだけで済ますのはもったいない事象です。たぶん,そうした極小の卵から幼虫が生まれ出る光景を見る機会は,たいていの人にはないでしょう。わたしは,こうしたいのちに関心を抱く性質なので,ほんとうに自然との出会いには感謝しています。

アカタテハの卵が孵化する直前,幼虫の頭部が卵上部にあることがよくわかります。黒いので,「ははーん,もうすぐ出てくるな」とピンときます。 

 
毛も見えます。こんな卵カプセルに身を潜めているのです。さあ,間もなく扉が開かれます。

 
幼虫が食い破ったのでしょう,蓋に当たる部分から頭が覗き始めました。この光景から誕生の瞬間が推測できるようです。


頭部がすっぽり現れました。外界を確かめるかのように,じつにゆっくり出始めました。 


いったん出てくると,あとは止まることなく滑らかに動き続けます。脚が出ました。初々しい姿! 


からだをグーッと伸ばします。 


さあ,全身が出てきました。胸脚は葉に軽く触れ,腹脚と尾脚でからだを支えていました。 

 
この後,幼虫は卵殻をまったく振り返ることなく,そこから離れていきました。


初めて見る者にとっては,やはり“感動物語” です。知らない世界を垣間見るたのしさがしっかり味わえました。 

  


ヒガンバナで吸蜜するクロアゲハ

2014-09-21 | クロアゲハ

辺りはもうヒガンバナの真っ盛り。その群落にでもなると,とんでもないほどの風景です。でもわたしは,もっとすくなくても林間のささやかな空間でポッ,ポッと咲いている風景の方が,趣きが感じられて好きです。

 


ウォーキングをしているときのこと。わたしがこの時期気にかけていることの一つに,ヒガンバナにアゲハチョウが飛来している風景が見られたら申し分ないのだが,というのがあります。そういう風景を目にすることはそうそうあるものではないからです。

ところがこの日は,この偶然に恵まれました。

路傍の斜面にヒガンバナが並んで咲いているところにさしかかりました。その前方の花に何やら黒いものが付いているように感じました。そっと近づいて行きました。クロアゲハです。慌ててポケットからコンデジを取り出して,被写体にレンズを向け,シャッターを切りながら近寄りました。幸いアゲハは吸蜜に夢中らしく,気づかれませんでした。 


途中モードを接写にし直して,撮りました。「どうか去らないで」と願いながらの,どきどきする撮影でした。

 


しきりに翅を動かし,からだを震わせながら吸蜜するので,写真はシャープな画像にはなっていません。しかし,その動きが伝わってくるのではないでしょうか。口吻もぼんやりとではありますが,伸びているのが確認できます。

赤い花と黒いチョウ,このコントラストは最高です。すてきなウォーキングになりました。 

 


ジャコウアゲハ観察記(その331)

2014-09-21 | ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハが羽化するのを待っていたら,困ったことに焦げ茶色に変色してきて,なにやらクモの巣のようなものが付いています。「いったいどういうことなんだろう」と注意深く観察していくと,クモの巣のように見えたものは幼虫の一種が作っているものとわかりました。 


おまけに,蛹の腹部に穴が開いていたのです。これはもういのち絶えている姿です。なんと無惨な!

穴と幼虫とのつながりまったく不明です。体内からそれがでてきたものかどうか,それもわかりません。巣を触っていると,幼虫が飛び出してきました。そうして,口から吐いた糸にぶら下がって宙吊りに。動きはぴんぴんして,力が余っている感じです。

 


葉にたどり着くと,大急ぎで逃げようとしました。その機敏な動きには驚きました。 


あとで調べると,どうもハマキガの一種のようなのですが,どうでしょうか。それにしても,わからないことが起こるものです。 

 


イナゴの季節

2014-09-20 | 昆虫

秋の気配が濃くなってきました。朝夕,風のなんとさわやかなこと。出会う人との挨拶は,まず気候の話です。目を遠くに向ければ,イネが色づいて,刈り取り作業が始まっていることがわかります。

田の畦でヒガンバナが真っ赤な花を付けています。路傍ではゲンノショウコが可憐な花をちりばめ,ツユクサが青い花弁を遠慮深げに開いています。ツユクサにはバッタが似合うようです。


ヒガンバナに赤トンボがとまっていました。真っ赤な花に,真っ赤なからだ。秋の匂いが濃くしました。すこし行くと,イナゴが花茎に取り付いていました。1匹のも,オス・メスがペアのもいました。イナゴのいる自然がわずかに復活し始めたのでしょうか。しかし,いったんいなくなるとなかなか元には戻りません。イナゴのような象徴的な昆虫の激減例は,「崩された生態系は取り返しの付かない結果をもたらすぞ」と警鐘を鳴らしているようにみえます。


そんなわけで,イナゴを見ると,「ほほーっ!」とうれしくなります。いうまでもなく,下の大きい方がメス,上がオス。2つが揃うと,区別が付きます。産卵に備えた行動です。 


昆虫の警戒心には,種によっては強いものがあります。離れたところから二匹の存在を認め,そっとそっと近づいていきました。しかし,敏感に感づかれました。花茎のちょっとずつ回るように移動して,わたしの正反対にいこうとするのです。カメラを持っていくと,それから遠ざかろうとしました。

花茎を指先ですこしずつ回して撮ろうとすると,おしまいには下方に移動を始めました。ほんとうに敏感です。

そんな行動はカマキリにも典型的に現れます。とくに幼虫時のカマキリです。個体の生命維持という観点で,昆虫の敏感さに驚かされます。さすがです。

 


卵のかたち,模様

2014-09-20 | ヤマトシジミ

葉の表側に産付された卵について,再び考えてみようと思います。

あれからずっと気に掛けているものの,一向に孵化の兆しは見えてきません。絶好の観察位置にあるので,その瞬間をたのしみに待っているのですが,どうも孵化には至らないように思われます。その間,卵は白色から灰色に変化しました。この変化はよく見かけます。しかし,いのちの成長が停止しているのか,ずっとその状態なのです。

再び考えたくなったのは,そのかたちといい,表面の模様といい,じつに見事というほかないからなのです。

卵の直径は,1mmはもちろん,その半分の0.5mmにも満たない大きさです。昆虫それぞれの卵はそれぞれの特徴を備えています。かたち・色・模様を見れば,研究者なら種の同定は比較的容易にできるでしょう。

ヤマトシジミの卵のかたちは厚みのある円形をしていて,中央付近が膨らみ,それを取り囲む部分が窪んで円を描いています。その窪みに沿うようにして,からだが収まっているのです。

そして,孵化時に,窪み部分が食べられてハッチが開くように蓋が開けられ,からだが現れるわけです。 窪み部分の厚みがもし薄いなら,それは巧妙なしくみです。ほんとうはどうか,わかりません。

 
模様は,もう驚愕するほかありません。こんなに小さな卵の表面がこんなふうにモザイク状の凹凸で覆われているとは! この構造は葉の葉脈の役目とそっくりなのかもしれません。殻の強度を保ち,かたちを維持するのに都合がよいという解釈です。


それにしても,産付前に,体内ですでにこのかたちができ上がっているのでしょうが,いったいどんなしくみで作られるのか,ふしぎです。この幾何学模様はまちがいなくしぜんのふしぎです。ヤマトシジミに限らず,すべての昆虫の卵に通ずるふしぎでもあります。 

 


虫の目レンズはおもしろい

2014-09-19 | 日記

久し振りに虫の目レンズを持って野外撮影に。ときどき訪れる池畔は,最近草刈りがなされており,バッタ類はめっきり減っていました。

トノサマバッタはまったく見かけませんでした。いちばん撮影したいのがそれだったのですが。 カワラバッタらしいバッタが見つかりました。枯れ草の上にいると,そこにいるのがよくわかりません。保護色の威力です。

 
ショウリョウバッタもいました。水田と家並みと空と向き合っているかのようです。のどかな風景に溶け込んでいます。


河川の堤防に移動しました。 バッタがおもしろい格好をしていました。その向こうを,大河が流れてゆきます。


堤防を歩いていると,わだちにクルマバッタが。地面にいる被写体をすばやく撮るのは苦労です。 感づかれたら,一瞬にして強力なジャンプ力で遠くに逃げ去られます。


このレンズならではの,おもしろい風景が切りとれるので重宝にしています。 

 


ルリタテハの卵

2014-09-19 | ルリタテハ

サルトリイバラをあちこち調べていきましたが,孵化後の卵殻がるだけ。もう諦めかけて,最後のサルトリイバラを確かめて目に入ったのが下写真のもの。二枚の葉に,それぞれ卵が一つずつ。これには感動! 女神の微笑を感じた瞬間です。 


手持ちのルーペで観察すると,産卵後時間が経過しているようで,幼虫が透視できました。 卵のかたちはアカタテハのそれと似通っています。


拡大すると,たしかに中が見えます。毛のようなものが確認できます。 


もう一つの卵も同じときに産み付けられたようで,中が透視できます。 


「これは持ち帰って,しっかり見届けなくちゃ」。そう思い,茎ごと採集しました。このつづきは,次回に。