おじゃまします、細太郎の担任で、親戚のお兄ちゃんのさらだです
漢字で、佐良田広之、と書きます。
何だと思いましたか?
ぼくの目は、たれていて細いんです。笑った顔だって言われますが、ほんとはおこった顔をしている時もあるんですよ~。
色は・・・普通です、白くありません。
脱いだら本気ですごいんですが、別に見せびらかそうとは思っていません。
弱そうに見えますが、実は空手三段なんです。
中学高校と体操部でした。今でも鉄棒の大車輪できます。跳馬だって、塚原ぐらいはできます。
うそじゃありません。
すべて、この細くてたれた目が原因なんです。弱くて笑った顔に見えるようなんですが、ぼくは気にしていません。
自慢しないだけです。
奥さんにご飯を作ってもらえないとか、おばさん先生にいじめられているとか、子どもたちはいいますが気にしていません。
ぼくは妻を愛していますし、妻はきちんと家庭のこともぼくのことも大切にしてくれます。夫婦のことをとやかく言われたくありません。
とくに色が白くて、結婚生活もまともにおくれなかったやつには・・・。
犬を連れ帰った金曜日、細太郎の思わぬ命名にあのバカは執拗に、
「その名前だけはやめてくれ~」
と、細太郎に泣きついたが、あの子は頑として受け付けない。しかも、これみよがしにあのバカの前で、
「リカ、リカ」
と犬を呼ぶ。犬もこの名前に尻尾を振って応えている。
けっこう、お気に入りかも(と、犬が思った)
さすがに見かねて、
「細太郎、その名前だけはよした方がいいんじゃないか?おとうさん、困っていないか?」
と、細太郎の前にしゃがみこんでじっくりゆっくりと話しかけてやる。
細太郎はぼくの目をにらみつけて、
「絶対イヤだ」
と強情だ。
「じゃ、じゃあバービーちゃんなんか、どうだ?」
ぼくは、フォローしたつもりだったが、実はぜんぜんフォローになっていなかったらしい。リカちゃんと一緒にバービー人形もあったんだってさ。
細太郎の顔が引きつってきた。
「細太郎おとうさんの気持ちも考えてやれ」
細太郎は、あのバカ・・・じゃなくて、こーちゃん(ぼくはこう呼んでいます)をじっとにらんで、
「人形の頭なんかなでてる気持ちの悪いやつなんか、嫌いだ」
と、叫んだ。
わ、わん?(これには犬もびっくりだ)
「に、にんぎょう?」
と、おばさん。
「・・・の頭を・・・?」
と、おじさん。
「な、なでたあ」
と、ぼく。
こ~ちゃん、真っ青。
「ぼくだって、ぼくだって、女の子のかっこしたいと思ったことあるよ。ひっく、ひっく、リカちゃんだって、ひっく、かわいいと思うよ、ひっく、だけど、だけど、大好きなおとうさんが、おとうさんが、ひっく、人形のかみの毛なでるなんて、きもちわるいよ」
わあんと、細太郎が泣いた。。。
ほそたろう。。。