どおもお、再び、藤川でえす。。。
はあい、ぼくのベイビーたち、元気にしていたかなあ~。
はう、どぅゆ~どぅ~?。
あ~いむふぁい~ん。
何で出てきたかって?このバカ野郎?とっとと引っ込め?。
うるせんだよ。
この最悪な状況を回避できるのは、この俺しかいないだろうっての。
あ?ふざけたこと言ってんな?。
誰に向って言ってるわけ?。
ったくなあ。。。
そんでさ、土曜日に俺はまた合コンを計画して、昼ごろこういっちゃんを拉致りにいったわけ。そしたら、入るなり犬にじゃれつかれ、おれのGパンの裾を噛んで引っ張るんだよ。
なんだ、この犬。
で、犬がぐいぐい奥まで連れて行こうとするから、俺はなんだか変に思い勝手知ったるこういっちゃんの家とばかりに居間に入っていった。
と、家族全員が雁首そろえてうなだれている。あのおっかさんまでしょげている。
おやじぐらいだ、茶なんか飲んでんのは・・・
細太郎の担任で親戚のお兄ちゃんの広之までいた。隣にいるいい女は、広之の女房の慶子だ。この俺がくどいても落ちなかった女だ。
ま、そんなことは後にして・・・。
「どうしたんですか?」
家族より早く、返事をしたのは犬だった。
「わん」
わかんねえ。。。
「細太郎の分のおすしまで食べちゃった」
「あ?」
「みんなで、細太郎を慰めるつもりでとったお寿司を、あいつが眠っているのを忘れて食べちゃったんだよ」
「へ?」
おやじさんが、何気そうに答えてくれた。
俺は、なにが起きたのかわからなかったが、瞬間想像がついた。
きっと、細太郎がまたごねだしたんだろう。。。
「で、細太郎はどこ」
俺は、思わず犬の顔を見てしまったら、犬はうなだれて後ろをむいた。
こいつも、寿司を食ったんだな。。。
犬が知らん振りを決め込む時の、お得意のポーズを見下ろして、
「おまえ、名前、リカちゃんだろ」
と、なんとなくピンときて犬を抱き上げたら、尻尾を振った。
なるほど・・・。
「細太郎、2階か?」
と犬を赤ん坊のように抱っこすると、犬も心得たもんで頭をすりよせる。
しょうーもねえなあ・・・。
で、こんな時に意外と頼りになる広之に尋ねると、
「アパートにいるよ」
と、こういっちゃんを気の毒そうに横目で見ながらこたえる。
「こりゃまた・・・」
細太郎もやっかいな性格だな・・・。誰に似たんだ・・・。
父親か・・・。
肝心かなめのこういっちゃんは、クラゲみたいにやる気がなさそうだ。
俺は、とんでもないところに来合わせたなあ、とため息をついた。
ついてねえ。。。
が、俺は、なんとなくこの一連のバカな騒動が、俺の肩にかかっているというのを感じ取っていた。
くそっ、また、光一のせいで女を取り逃がしたか・・・。
疫病神なやつ。
俺は、それでも人が好いから、人肌脱いでやろう、という気になっちまったんだなあ。。。
な、俺っていいやつだろ?
あ?自分でそんなことをいうやつは信用できねえ?
てめえ、前回も俺をコケにした野郎だな?
なに、野郎じゃあねえ?
・・・、俺、気の強い女、タイプだぜい・・・なわけ、ね~だろっ
くそ・・・
つーびーこんてにゅーだ
おじゃまします、細太郎の担任で、親戚のお兄ちゃんの佐良田広之です
きのう、細太郎の思わぬ爆弾発言で、しばし硬直状態の細太郎一家でしたが、細太郎の興奮が納まるまで保護者一同は一言も話せませんでした。
細太郎の父こーちゃんはしょげ返り、おばさんはため息ばかり、おじさんは…お、おじさん?あ~、隣の部屋で茶飲んでます。。。
相変わらずのんきなオヤジだ。
犬ぐらいでしょうかね、細太郎の涙をなめ、ほおを摺り寄せて慰めているのは。
細太郎、実はなあ…、リカちゃんというのは…。
こーちゃんが何も言わないのであれば、ぼくからは何も言えません。
今は、細太郎、おとうさんを気持ち悪いって思っても、理解する日がくるだろう。それまでの辛抱だ。。。
…確かに、あんまり想像したくはないが…。
細太郎は、泣きつかれて眠ってしまった。
おばさんが、犬を抱きかかえ、
「どうれ、リカちゃん、きれいきれいしましょうねえ」
と、こちらがギョッとするような言葉をはいて、チラッとこ~ちゃんを見た。
「光一バカかおまえはっ」
こ~ちゃんは顔をあげた。
「いつまで細太郎をこのままにしておくつもりかおまえがやらずに誰がやるんだっ」
と、いつものように怒鳴りつけると、さっさと風呂へ行ってしまった。
こ~ちゃんはのそのそと立ち上がると、床にうつ伏せで眠っている細太郎を無言で抱き上げた。
と、おじさんが顔を出して、
「寿司とっておいたぞ。広之、嫁を呼べ。剛も帰ってくるから、みんなでメシを食おう」
と、こ~ちゃんに早く細太郎を連れて2階に行けと促し、ぼくはおじさんののんきさをうらやましく思いながら、携帯を取り出した。
しばらくして、
「はいはい、リカちゃん、きれいになりましたよ~。お寿司食べようねえ」
おばさんが犬を拭きながら出てきた。
「おばさあん、リカちゃんはまずいでしょ、リカちゃんは」
と、ぼくは犬の頭をなでる。
「いいじゃない別に。世の中、同じ名前の人間は大勢いるんだから」
「犬ですよ~」
「じゃあ、ハチでもいいのかこの子はイヤだと言ったよ、ねえ?」
と、犬に同意を求めた。犬も、
「わん」
と一声吠えると、尻尾を激しく振る。
「まぢ?」
ぼくは、犬の鼻をつんと押し、
「リ~カ」
と呼びかけた。
犬は嬉しそうに尻尾を振り、やがて2階から降りてきたこ~ちゃんの足下にじゃれついた。
こ~ちゃんは、犬を抱き上げて、
「リカ」
と一言つぶやき、犬を抱きしめて泣き出した。
「リカ、リカ」
まだ、忘れてないのか…こ~ちゃん。
「バ~カ」
おばさんはそうつぶやくなり、部屋を出ていこうとしたが、
「光一、お寿司代、払っときなさいよ」
と、泣いている息子に無慈悲な言葉を投げていってしまった。
なんて、血も涙もない女なんだ…。
さて、ぼくの妻の慶子と久しぶりに帰ってきたこのうちの次男の剛を交えて、ぼくらは特上寿司にビールにと、舌鼓を打った。犬のリカもおすそ分けをもらい、大満足だ。
うまい物やアルコールに、湿っぽい話は似合わない。
すべてはうそのように、ぼくらは団欒を楽しんだ。
でも、ぼくらは忘れていたのだ、大切な人物を…。
「ぼくの分は?」
寝ぼけたような声が聞こえてきて、ぼくらは一斉に声のした方を振り返った。
「ぼくのおすしは?」
細太郎がもう一度たずねた時、凍りついたぼくらは、再びテーブルの上をみた。
そこには、空になったお寿司の入れ物が残っているだけであった。。。
「ぼくのおすしはあ~」
わんわん(おいしかったよ・・・犬がいった・・・)
きのう、細太郎の思わぬ爆弾発言で、しばし硬直状態の細太郎一家でしたが、細太郎の興奮が納まるまで保護者一同は一言も話せませんでした。
細太郎の父こーちゃんはしょげ返り、おばさんはため息ばかり、おじさんは…お、おじさん?あ~、隣の部屋で茶飲んでます。。。
相変わらずのんきなオヤジだ。
犬ぐらいでしょうかね、細太郎の涙をなめ、ほおを摺り寄せて慰めているのは。
細太郎、実はなあ…、リカちゃんというのは…。
こーちゃんが何も言わないのであれば、ぼくからは何も言えません。
今は、細太郎、おとうさんを気持ち悪いって思っても、理解する日がくるだろう。それまでの辛抱だ。。。
…確かに、あんまり想像したくはないが…。
細太郎は、泣きつかれて眠ってしまった。
おばさんが、犬を抱きかかえ、
「どうれ、リカちゃん、きれいきれいしましょうねえ」
と、こちらがギョッとするような言葉をはいて、チラッとこ~ちゃんを見た。
「光一バカかおまえはっ」
こ~ちゃんは顔をあげた。
「いつまで細太郎をこのままにしておくつもりかおまえがやらずに誰がやるんだっ」
と、いつものように怒鳴りつけると、さっさと風呂へ行ってしまった。
こ~ちゃんはのそのそと立ち上がると、床にうつ伏せで眠っている細太郎を無言で抱き上げた。
と、おじさんが顔を出して、
「寿司とっておいたぞ。広之、嫁を呼べ。剛も帰ってくるから、みんなでメシを食おう」
と、こ~ちゃんに早く細太郎を連れて2階に行けと促し、ぼくはおじさんののんきさをうらやましく思いながら、携帯を取り出した。
しばらくして、
「はいはい、リカちゃん、きれいになりましたよ~。お寿司食べようねえ」
おばさんが犬を拭きながら出てきた。
「おばさあん、リカちゃんはまずいでしょ、リカちゃんは」
と、ぼくは犬の頭をなでる。
「いいじゃない別に。世の中、同じ名前の人間は大勢いるんだから」
「犬ですよ~」
「じゃあ、ハチでもいいのかこの子はイヤだと言ったよ、ねえ?」
と、犬に同意を求めた。犬も、
「わん」
と一声吠えると、尻尾を激しく振る。
「まぢ?」
ぼくは、犬の鼻をつんと押し、
「リ~カ」
と呼びかけた。
犬は嬉しそうに尻尾を振り、やがて2階から降りてきたこ~ちゃんの足下にじゃれついた。
こ~ちゃんは、犬を抱き上げて、
「リカ」
と一言つぶやき、犬を抱きしめて泣き出した。
「リカ、リカ」
まだ、忘れてないのか…こ~ちゃん。
「バ~カ」
おばさんはそうつぶやくなり、部屋を出ていこうとしたが、
「光一、お寿司代、払っときなさいよ」
と、泣いている息子に無慈悲な言葉を投げていってしまった。
なんて、血も涙もない女なんだ…。
さて、ぼくの妻の慶子と久しぶりに帰ってきたこのうちの次男の剛を交えて、ぼくらは特上寿司にビールにと、舌鼓を打った。犬のリカもおすそ分けをもらい、大満足だ。
うまい物やアルコールに、湿っぽい話は似合わない。
すべてはうそのように、ぼくらは団欒を楽しんだ。
でも、ぼくらは忘れていたのだ、大切な人物を…。
「ぼくの分は?」
寝ぼけたような声が聞こえてきて、ぼくらは一斉に声のした方を振り返った。
「ぼくのおすしは?」
細太郎がもう一度たずねた時、凍りついたぼくらは、再びテーブルの上をみた。
そこには、空になったお寿司の入れ物が残っているだけであった。。。
「ぼくのおすしはあ~」
わんわん(おいしかったよ・・・犬がいった・・・)