尾張氏についてもう少し詳しく見ておきたい。尾張氏の祖について記紀は以下のように記している。(各人物の読み方についてはまとめて下段に記す。)
●日本書紀
①火明命は尾張連の遠祖である(第9段)
②天忍穂耳尊の子である天火明命の子の天香山は尾張連
の遠祖である(第9段一書第6)
③孝安天皇の母である世襲足媛の姉の瀛津世襲は尾張連
の遠祖である(孝安紀)
●古事記
①神武武天皇の子である神八井耳命は尾張丹羽臣等の祖
である
②孝昭天皇の后である余曽多本毘売命の姉の奥津余曽は
尾張連の祖である
③崇神天皇の妃の意富阿麻比売は尾張連の祖である
④孝元天皇の子である比古布都押之信命が尾張連等の祖
である意富那毘の妹の葛城の高千那毘売と結婚して生
まれた子が味師内宿禰である
天香山(あめのかぐやま)
世襲足媛(よそたらしひめ)
瀛津世襲(おきつよそ)
神八井耳命(かむやいみみのみこと)
余曽多本毘売命(よそたらひめのみこと)
意富阿麻比売(おおあまひめ)
比古布都押之信命(ふこふつおしのまことのみこと)
意富那毘(おおなび)
味師内宿禰(うましうちのすくね)
まず古事記の④において、尾張連の祖である意富那毘の妹、高千那毘売が葛城にいたことがわかり、尾張氏が葛城の氏族であることが想定される。また、尾張氏の女性が皇族に入ったこともわかる。次に、書紀の①と②は同じことを言っており、火明命が尾張氏の祖先であること、すなわち尾張氏が天孫族の後裔であることを表している。書紀の③と古事記の②も同じことを言っており、瀛津世襲が尾張連の祖先であることがわかる。ただし、瀛津世襲なる人物、あるいはその後裔の話はこれ以降の記紀に登場しないので、あくまで尾張氏が古くから天皇家の外戚であったことを主張するためだけの記述であると考えられる。以上のことから少なくとも尾張氏は天孫族の後裔であり、天皇家外戚という重要な氏族であったことがわかる。
そのうえで私は古事記の①に「尾張丹羽臣」の名が見えることに注目したい。通説では愛知県に拠点をもつ丹羽(にわ)氏を指すとされているが、丹羽=丹波と考えて「にわ」ではなく「たにわ」あるいは「たんば」と読んで、尾張氏と丹波の関係を表していると考えたい。また、古事記の③にある「意富阿麻比売」の存在も重要だ。書紀においても崇神天皇の妃として「尾張大海媛」の名で登場するが、この大海媛が尾張氏の祖先であるという。次に尾張氏と丹波の関係、尾張氏と大海氏の関係を考えてみたい。
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●日本書紀
①火明命は尾張連の遠祖である(第9段)
②天忍穂耳尊の子である天火明命の子の天香山は尾張連
の遠祖である(第9段一書第6)
③孝安天皇の母である世襲足媛の姉の瀛津世襲は尾張連
の遠祖である(孝安紀)
●古事記
①神武武天皇の子である神八井耳命は尾張丹羽臣等の祖
である
②孝昭天皇の后である余曽多本毘売命の姉の奥津余曽は
尾張連の祖である
③崇神天皇の妃の意富阿麻比売は尾張連の祖である
④孝元天皇の子である比古布都押之信命が尾張連等の祖
である意富那毘の妹の葛城の高千那毘売と結婚して生
まれた子が味師内宿禰である
天香山(あめのかぐやま)
世襲足媛(よそたらしひめ)
瀛津世襲(おきつよそ)
神八井耳命(かむやいみみのみこと)
余曽多本毘売命(よそたらひめのみこと)
意富阿麻比売(おおあまひめ)
比古布都押之信命(ふこふつおしのまことのみこと)
意富那毘(おおなび)
味師内宿禰(うましうちのすくね)
まず古事記の④において、尾張連の祖である意富那毘の妹、高千那毘売が葛城にいたことがわかり、尾張氏が葛城の氏族であることが想定される。また、尾張氏の女性が皇族に入ったこともわかる。次に、書紀の①と②は同じことを言っており、火明命が尾張氏の祖先であること、すなわち尾張氏が天孫族の後裔であることを表している。書紀の③と古事記の②も同じことを言っており、瀛津世襲が尾張連の祖先であることがわかる。ただし、瀛津世襲なる人物、あるいはその後裔の話はこれ以降の記紀に登場しないので、あくまで尾張氏が古くから天皇家の外戚であったことを主張するためだけの記述であると考えられる。以上のことから少なくとも尾張氏は天孫族の後裔であり、天皇家外戚という重要な氏族であったことがわかる。
そのうえで私は古事記の①に「尾張丹羽臣」の名が見えることに注目したい。通説では愛知県に拠点をもつ丹羽(にわ)氏を指すとされているが、丹羽=丹波と考えて「にわ」ではなく「たにわ」あるいは「たんば」と読んで、尾張氏と丹波の関係を表していると考えたい。また、古事記の③にある「意富阿麻比売」の存在も重要だ。書紀においても崇神天皇の妃として「尾張大海媛」の名で登場するが、この大海媛が尾張氏の祖先であるという。次に尾張氏と丹波の関係、尾張氏と大海氏の関係を考えてみたい。
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