皿尾城の空の下

久伊豆大雷神社。勧請八百年を超える忍領乾の守護神。現在の宮司で二十三代目。郷土史や日常生活を綴っています。

熊谷市 太井榛名神社

2019-05-16 22:28:11 | 神社と歴史

熊谷市の南東部に位置する太井地区は、現在でも農業区域が広がっている。地名の由来は昔この辺りには泉が多く、どこを掘っても井戸ができるほどで、村内に多くの井戸があったことによる。村の歴史は江戸初期まで遡り、当時は「太井四ケ村」と呼ばれる大きな村で、幕末になって太井、門井、棚田、新宿の四つに分村している。現在太井は熊谷市、門井、棚田は行田市、新宿は鴻巣市に属している。

 多くの畑に囲まれるように鎮守の杜が生い茂り、いかにも村の鎮守としての佇まいを残している。

 鳥居の脇には塞ノ神が祀られ、旅の無事や脚の健康を願い草鞋が奉納されている。

 年を通じて祭事の当番を「用掛かり」と呼び、新井、新田、番場、北口の四廓から一名ずつ当てている。年番や総代といった呼び名が多い中で、地域によってこうした呼び名があるのだと改めて思う。

 鳥居をくぐると拝殿まで整然と敷石が敷かれているが、その一つ一つに奉納した年とその用掛かりの名が刻まれれいる。大正期から始められ昭和の末に鳥居のところまで達しいて、以降傷んだ石を換えるように毎年の奉納がなされている。地方の一神社においてこうした奉納が途切れることなく続いていることに、鎮守として氏子から篤い信仰を受けている表れのようで感銘を受ける。

 

創建についての詳しい社記はないようだが、江戸初期に管理していた福聚院の創建が慶長七年(1602)と伝わる。御祭神は湯彦友命、埴安姫命。農業区域の信仰として「榛名様がお守りくださるおけげで、太井は虫送りや雨乞いなどはしたことがない」と言われている。勧請元である群馬榛名神社はその土地柄、雨乞い信仰が盛んである。

村の禁忌伝承に「卵を食べると大雨になるので食べてはいけない」と伝わる。昔大雨の際に知らずに芝居の芸人が卵を食べたところたちまち大雨になったと伝わり、年配の人ほど卵を食べるのを禁じたという。

流石に現在までこの禁忌が守られているとは考えにくいが、おそらく畑作中心の農業区域で養鶏農家に転じることを戒める意味合いがあったのではないかと考えられる。穀物(麦大豆)中心の農業区域にとって養鶏場が増えると収穫に影響すると考えたのではないだろうか。

現在の社殿は昭和五十年の建築でその社殿建設記念碑には若き日の父の名が刻まれている。

こうした父の足跡に出会う度、父の生き方を誇りに思い、自分自身兼職ではあるが神職としての務めを果たしていかなければと感じている。

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南紀白浜 名勝古跡 三段壁洞窟

2019-05-16 20:49:08 | 史跡をめぐり

 美しい太平洋を望む和歌山県牟婁郡白浜町。白浜海岸からすぐそばには濃緑の海に直立する高さ60mの絶壁を見ることができます。その岩層深くにかつて熊野水軍の船隠しの場であった洞窟が眠っています。名勝三段壁洞窟です。

 源平の合戦が繰り広げられた頃、ここ和歌山県熊野地方には熊野水軍と呼ばれた強力な軍が存在しました。率いていたのは熊野別当湛増で、あの源義経に仕えた武蔵坊弁慶の父にあたる人物です。

 湛増は元々平家方であったにもかかわらず、源氏に付いた息子弁慶の要請で、源平合戦の際どちらに付くか苦慮していたそうです。迷った挙句、神意を占うのに闘鶏の七番勝負を試みます。赤の鶏を平家、白の鶏を源氏と見立てたところ、結果七番とも白鶏が勝利したといいます。湛増は「神意は源氏にあり」と熊野水軍に源氏方への加勢を呼びかけ、源平両軍が対峙する屋島の浦(香川県)に向け出発します。

 そのころ屋島の浦では那須与一が扇の的に矢を射貫き、勝敗決せず、瀬戸内海を抜け厳島を通って壇ノ浦へと向かいます。

 壇ノ浦では現れた船団が敵か味方か見守る中、船上に仁王立ちとなった湛増が源平両軍に向けて叫びます。「紀伊の国熊野新宮に仕える熊野別当湛増、神意を奉じて源氏の軍に馳せ参じ申した。率いるは熊野水軍二千余名、千艘二百。いざ熊野水軍の力のほどお目にかけよう

それを聞いた源氏の軍からは大歓声が上がります。勢いそのまま源平の最後の合戦は源氏に軍配が上がることとなったのです。

洞窟内には牟婁大弁財天が祀られていて、大黒天、毘沙門天他十六童子を従えすべての願いをかなえるとされています。弁財天はインド発祥の水の神であり、場所柄入水して亡くなった方の霊を鎮めているようです。

大自然の壮大な景観と、千古の神秘、そして歴史のロマンが交錯する古跡三段壁洞窟には春の訪れとともに多くの人々で賑わっていました。

 

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