か加須市大桑の地名は昔、筑波の門井村から移り住んだ大桑氏がこの地に勢力を得たことによる。その大桑氏も姓を出自かららとって門井姓に改めたという。古利根川流域の地域であることから、堤も築かれ現在でもその上に社殿が建っている。
主祭神は別雷命で本殿に十一面観音像を安置している。板倉の雷電様から勧請したものであろうか。笹祭りの中心となるのが古くから伝わる獅子舞である。昭和三十五年に市無形文化財に指定されている。加須市北小浜の八幡神社、同多門寺愛宕神社に伝わるものと同じ流派であるという。ことに当地に伝わる獅子舞は動きが激しいため「暴れ獅子」と呼ばれる。現在使われている獅子頭は天保十四年から伝わるものだという。
境内末社である愛宕社は、昔当地に火事が頻発したことから、防火の神として信仰の厚い、京都愛宕神社の護摩の灰を御神体として祀ったものだという。また古くから社頭においてある楊枝を耳に入れると、耳の病が治るといわれている。同じ信仰が先の多門寺愛宕神社にも伝わり、地域の関連が見られる。尚別当であった多門寺はすでに廃寺となりその姿を見ることはできない。
こうした信仰に加え、古くは多くの習俗が残っていたが、生活様式の変化や転入者の増加に伴い次第に失われていった。
その中でも昭和一桁台まで行われていた雨乞いは特殊なものであったという。
稲や大豆が日照り続きで萎れてくると、隠居獅子といわれる古い獅子頭を箱に収め神社から葛西陽水まで担いで行き、用水に流し観音堂池まで来るとこれを沈めた。雨が降れば隠居獅子を神社に戻したが、降らなければ初めからこの儀式を何度でも繰り返したという。
板倉の雷電様も雨乞い神事が盛んで、鶴ヶ島市脚折の白髭神社では四年に一度の神事として板倉まで神水を取りに行く、「脚折雨乞」が国の指定文化財となっている。