数ヶ月前のことになる。松ちゃんに何か面白い映画あるかとお聞きすると、「誰も知らない」を観てきたとおっやる。レンタルで出ていたので借りてきた。2003年の作だ。2004年キネマ旬報1位・カンヌ映画祭でも賞をとっている
まず、事実に基づいた映画であると断り書きがある。最初、母子家庭の家族がアパートに引っ越すところから始まる。だだし、小さい子が大勢だと断られるので下の二人はトランクに入れての異常な引越だ。YOU扮する30代の母親と13歳の長男明、11歳くらいの京子と4~5歳の無邪気な茂とゆき。このキャスティングがよく出来ている。
母親は子供に約束させる。買い物を取り仕切る明以外は一切、外出してはならないと。なんと、学校へもださせていない。母親は、家事のすべてを明に任せて働きに出る。そして夜遅く帰る。1日を子供たちはアパートの中でひっそり過ごす。信じられないが、核家族化された現代、都会では十分起こり得ることだ。
すぐ母親は生活費を明に託して帰らなくなる。子供たちだけの生活が始まる。数ヶ月で生活費が底を付く。ここに来て、母親の身勝手さに腹が立つ。かといって子供たちを愛してはいるのだ。が、それ以上に、自分の人生のほうが大切なのだ。勝手だ。父親はそれぞれが違う。
四人の子供たちはかわいいが、特に長女京子の耐え忍ぶ、けなげな姿を見ていると胸が締め付けられそうになる。みんなでアパートを抜け出し、公園で遊ぶシーンがあるが、弟が乗った遊具に砂が付いた。その砂をお姉ちゃんがそっと払う。なんでそんなことするんや!公園の遊具に砂が付くくらい当たり前やんか!他人に迷惑をかけたくない。学校へも行ってない子に、なぜそんな知恵が働くのか。
やがて、水道も電気も止まり、最悪の事態が起こる。いったいこの映画はどんな結末になるんだろうかと先を急ぐ。この映画のせめてもの救いは、子供たちの、それでも強く生きていこうとする姿だ。1年の間に子供たちが成長していることに気づき驚かされる。
田舎ほど他人への干渉が強い。それは余計なお世話だけれど、思いやりを持った目で心配しあう気持ちは大切だ。是枝裕和監督は子供たちと距離をおいて、しかし、温かく撮っている。
京子のしぐさが目に浮かぶ。やるせないわ!わたしゃロリコンやろか?
追伸
谷川俊太郎さんの詩、松ちゃん知ってますか?
「誰も知らないによせて」
生まれてきて限りない青空にみつめられたから
きみたちは生きる
生まれてきて手をつなぐことを覚えたから
きみたちは寄り添う
生まれてきて失うことを知ったから
それでも明日はあると知ったから
きみたちは誰も知らない自分を生きる