官僚の最大のメリットは、天下り先の確保・拡大だ。
業界には、ありとあらゆる業種区分で職能団体がある。
<例1>銀行業・・・・全銀協、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会。
<例2>鉱業・・・・日本鉱業協会、日本砂利協会、石灰石鉱業協会。
<例3>建設業・・・・全国建設業協会、全国中小建設業協会、日本鉄道建設業協会。
これらの団体は、監督官庁の天下り先でもある。理事長・理事は、たいてい業界の民間人が非常勤で務めているが、常勤の「専務理事」は役人OBと相場が決まっている。
専務理事は、産業政策が行われるとき、業界と役所の調整連絡役を務める。
じつは、役所が産業政策をやりたがる最大の理由は、この業界団体の専務理事ポストにある。政策が有効であろうとなかろうと、専務理事ポストを天下り先として確保したいために、産業政策を行うのだ。
業界側からすれば、天下りを受け入れる代わりに業界に便宜を図ってもらう、ということになる。
専務理事は、役所の折衝を担当するといっても、仕事らしい仕事をしているわけではない。要は、事業者団体に寄生して甘い汁を吸っているだけだ。それでいて、時折口を出してくるから始末が悪い。
事業者団体は、業者が集まって情報交換する場で、カルテルにつながりやすい。そのため、事業者団体も公正取引委員会の取り締まり対象となる。審査に出かけると、専務理事が出てきて、「私どもは無色透明ですよ」と、取り締まりに抵抗する。専務理事の出身省庁との力関係では、それ以上公取委が介入するのは困難だ。
政権が制度設計が必要な大きな政策をやるときも、専務理事政策の出番だ。
<例>エコポイント(2009年に麻生太郎政権が行った追加景気対策の目玉の一つ)。
エコポイントは、消費を促すために作られた、とされる。
しかし、消費を促したいなら、もっと簡単な方法がある。所得控除だ。所得申告時にエコカーや省エネ家電の購入代金の領収書と保証書を添付すれば減税される、といったやり方にすればよい。この場合、わかりにくいエコポイント制はいらない。余計な人件費、事務経費もいらない。
もっと簡便な方法は、追加経済対策の予算の大部分を減税にまわすのだ。そのほうが消費につながる。
だが、あえて七面倒な制度をつくり、役人が間に入って配分する方式にしたのは、彼らが利権拡大を狙ったからだ。
エコポイントの対象になる省エネ製品は、統一省エネラベルがついているものに限られた。では、このラベルはどこが出しているか。財団法人「省エネルギーセンター」(経産省と資源エネルギー庁の外郭団体)だ。
認証制度と減税を結びつければ、認証機関のグレードはアップする。中立性も高まる。認証制度は一ますます役立つ、とされる。だが、日本の他の国で大きく違うのは、認証機関だ。他の国では、民間団体が認証するケースが多い。他方、日本では政府が抱え込み、認証機関が役人の天下り先になっている。そして、天下った専務理事が、認証機関の実権を握っている。
認証機関を天下り専務理事が実質的に仕切る仕組みにしておくと、他の役人OBが民間メーカーへ天下りする道が開ける。
<例>資源エネルギー庁の役人が民間メーカーに天下るときに、一定基準を満たす省エネラベルの製品には税制上の優遇措置をつける、といった言い方をする。税の恩典を受けられれば、メーカーも大きなメリットを得られるので、喜んで役人OBを受け入れる。
かくのごとく、認証機関の専務理事政策は、役人にとって一粒で二度おいしい。
エコマークも同様の仕組みになっている。エコマークの認証は、財団法人「日本環境協会」の「エコマーク事務局」が行っている。製品やサービスにエコマークの表示を許可し、代わりに使用料を徴収する。集めた資金で助成金を交付している。この「日本環境協会」の常務理事の一人は、元・環境省大臣官房審議官だ【注】。
【注】「「日本環境協会」役員名簿」役員名簿。
以上、高橋洋一(元大蔵相理財局資金企画室長)『財務省が隠す650兆円の国民資産』(講談社、2011)に拠る。
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業界には、ありとあらゆる業種区分で職能団体がある。
<例1>銀行業・・・・全銀協、全国地方銀行協会、第二地方銀行協会。
<例2>鉱業・・・・日本鉱業協会、日本砂利協会、石灰石鉱業協会。
<例3>建設業・・・・全国建設業協会、全国中小建設業協会、日本鉄道建設業協会。
これらの団体は、監督官庁の天下り先でもある。理事長・理事は、たいてい業界の民間人が非常勤で務めているが、常勤の「専務理事」は役人OBと相場が決まっている。
専務理事は、産業政策が行われるとき、業界と役所の調整連絡役を務める。
じつは、役所が産業政策をやりたがる最大の理由は、この業界団体の専務理事ポストにある。政策が有効であろうとなかろうと、専務理事ポストを天下り先として確保したいために、産業政策を行うのだ。
業界側からすれば、天下りを受け入れる代わりに業界に便宜を図ってもらう、ということになる。
専務理事は、役所の折衝を担当するといっても、仕事らしい仕事をしているわけではない。要は、事業者団体に寄生して甘い汁を吸っているだけだ。それでいて、時折口を出してくるから始末が悪い。
事業者団体は、業者が集まって情報交換する場で、カルテルにつながりやすい。そのため、事業者団体も公正取引委員会の取り締まり対象となる。審査に出かけると、専務理事が出てきて、「私どもは無色透明ですよ」と、取り締まりに抵抗する。専務理事の出身省庁との力関係では、それ以上公取委が介入するのは困難だ。
政権が制度設計が必要な大きな政策をやるときも、専務理事政策の出番だ。
<例>エコポイント(2009年に麻生太郎政権が行った追加景気対策の目玉の一つ)。
エコポイントは、消費を促すために作られた、とされる。
しかし、消費を促したいなら、もっと簡単な方法がある。所得控除だ。所得申告時にエコカーや省エネ家電の購入代金の領収書と保証書を添付すれば減税される、といったやり方にすればよい。この場合、わかりにくいエコポイント制はいらない。余計な人件費、事務経費もいらない。
もっと簡便な方法は、追加経済対策の予算の大部分を減税にまわすのだ。そのほうが消費につながる。
だが、あえて七面倒な制度をつくり、役人が間に入って配分する方式にしたのは、彼らが利権拡大を狙ったからだ。
エコポイントの対象になる省エネ製品は、統一省エネラベルがついているものに限られた。では、このラベルはどこが出しているか。財団法人「省エネルギーセンター」(経産省と資源エネルギー庁の外郭団体)だ。
認証制度と減税を結びつければ、認証機関のグレードはアップする。中立性も高まる。認証制度は一ますます役立つ、とされる。だが、日本の他の国で大きく違うのは、認証機関だ。他の国では、民間団体が認証するケースが多い。他方、日本では政府が抱え込み、認証機関が役人の天下り先になっている。そして、天下った専務理事が、認証機関の実権を握っている。
認証機関を天下り専務理事が実質的に仕切る仕組みにしておくと、他の役人OBが民間メーカーへ天下りする道が開ける。
<例>資源エネルギー庁の役人が民間メーカーに天下るときに、一定基準を満たす省エネラベルの製品には税制上の優遇措置をつける、といった言い方をする。税の恩典を受けられれば、メーカーも大きなメリットを得られるので、喜んで役人OBを受け入れる。
かくのごとく、認証機関の専務理事政策は、役人にとって一粒で二度おいしい。
エコマークも同様の仕組みになっている。エコマークの認証は、財団法人「日本環境協会」の「エコマーク事務局」が行っている。製品やサービスにエコマークの表示を許可し、代わりに使用料を徴収する。集めた資金で助成金を交付している。この「日本環境協会」の常務理事の一人は、元・環境省大臣官房審議官だ【注】。
【注】「「日本環境協会」役員名簿」役員名簿。
以上、高橋洋一(元大蔵相理財局資金企画室長)『財務省が隠す650兆円の国民資産』(講談社、2011)に拠る。
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