【詩歌】村野四郎「変な界隈」
このへんの塵埃箱(ごみばこ)は
さかなの骨とか腸詰めの尻とか
どれも死でいっぱいだが
ある日浮浪者が
なに気なく 一つの箱の蓋をあけると
それには底がなくて 井戸のように深く
そのまま ずうっと
世界の向こうがわへ抜けていた
たれかが隠しておいた抜道にちがいない
だが そこから覗くと
地球には核がなく
からんとして 冥府(あのよ)もなかった
彼は舌うちをした
そして ぱたんと蓋をしめた
すると忽ち一切合財が
もう まわりの死と見分けがつかなかった
□村野四郎「変な界隈」(『亡羊記』、政治公論社、1959):第11回読売文学賞
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【詩歌】村野四郎「塀のむこう」」
「【詩歌】村野四郎「さんさんたる鮟鱇」」
「【詩歌】村野四郎「無神論」」
「【詩歌】村野四郎「鉄棒(二)」」
「【詩歌】村野四郎「高障害」」
「【詩歌】村野四郎「競争」」
「【詩歌】村野四郎「鉄槌投」」
「【詩歌】村野四郎「拳闘」」
「【詩歌】村野四郎「棒高飛」」
「【詩歌】村野四郎「槍投」」
「【詩歌】村野四郎を読む(4) ~鹿~」
「【詩歌】村野四郎を読む(3) ~さんたんたる鮟鱇~」
「【詩歌】村野四郎を読む(2) ~体操~」
「【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込(二)~」
このへんの塵埃箱(ごみばこ)は
さかなの骨とか腸詰めの尻とか
どれも死でいっぱいだが
ある日浮浪者が
なに気なく 一つの箱の蓋をあけると
それには底がなくて 井戸のように深く
そのまま ずうっと
世界の向こうがわへ抜けていた
たれかが隠しておいた抜道にちがいない
だが そこから覗くと
地球には核がなく
からんとして 冥府(あのよ)もなかった
彼は舌うちをした
そして ぱたんと蓋をしめた
すると忽ち一切合財が
もう まわりの死と見分けがつかなかった
□村野四郎「変な界隈」(『亡羊記』、政治公論社、1959):第11回読売文学賞
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【参考】
「【詩歌】村野四郎「塀のむこう」」
「【詩歌】村野四郎「さんさんたる鮟鱇」」
「【詩歌】村野四郎「無神論」」
「【詩歌】村野四郎「鉄棒(二)」」
「【詩歌】村野四郎「高障害」」
「【詩歌】村野四郎「競争」」
「【詩歌】村野四郎「鉄槌投」」
「【詩歌】村野四郎「拳闘」」
「【詩歌】村野四郎「棒高飛」」
「【詩歌】村野四郎「槍投」」
「【詩歌】村野四郎を読む(4) ~鹿~」
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「【詩歌】村野四郎を読む(1) ~飛込(二)~」