語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【メンタル・スケッチ】群衆

2013年12月20日 | 詩歌
   

  その坂を急ぎゆく群衆があり
  その坂を急いで降りゆく群衆があり
  はれやかなほほえみをうかべ追いたてられるように
  いずこへともなく消えていく・・・・

  もしぼくがぼく自身の番人でないならば
  まして兄弟たちの番人でもありえない
  ふりかえりざま 冬の陽ざしを盗み見
  ぼくを見張る幾千の眼をぼくは知る

  朝ならば駅の階段の人ごみのなかに逃げまどい
  ふと陥没する大きな穴をぼくは覗く
  --だから木枯のふき荒れる日

  夜でもいい昼でもいい
  手から手 眼から眼へと親しみをかわし
  肩をくみ歌いながらに群衆にまぎれてゆく

□中村稔「冬」(『中村稔詩集1944-1986』、青土社、1988)
     ↓クリック、プリーズ。↓
にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ  人気ブログランキングへ  blogram投票ボタン

 【参考】
【本】この1年に出会った本
【中村稔ノート】凧 ~戦禍の記憶~
【中村稔ノート】ある潟の日没 ~震災と戦災~
【読書余滴】追悼、森澄雄の生涯と仕事
書評:『本読みの達人が選んだ「この3冊」』
書評:『加藤周一自選集8 1987-1993』


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 【旅】名古屋城本丸御殿襖絵 | トップ | 【原発】推進 ~成長戦略な... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

詩歌」カテゴリの最新記事