語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【朝日俳壇抄】人間も桃もおほかた皮と水 ~9月25日~

2017年10月17日 | 詩歌
【凡例】☆印は共選作。①、②以下丸文字は一席、二席等。

<大串章選>
 ①秋といふ駅に降り立つ目覚めかな (東京都)青木千禾子
 ②初鴨に湖(うみ)の光の新しく (鹿児島市)青野迦葉
 ③灯を消して人間の闇虫の闇 (長野市)縣展子
 ⑨賢治忌や古民家カフェにセロ流る (弘前市)須藤一光
 ⑩居酒屋へ月の神社を通りけり (明石市)北前波塔
 【評】第一句。爽やかな目覚め。秋晴れの一日であろう。第二句。初鴨が飛んで来ると、湖の光が新しくなる。第三句。「人間の闇」は辛辣(しんらつ)だが「虫の闇」は趣がある。虫の闇に心を解き放ち、人間の闇を消したい。

<稲畑汀子選>
 ①流星や見えぬ宇宙を見てゐたり (小樽市)伊藤玉枝
 【評】一句目。流星を見ようと夜空を仰いだ作者。待ってもなかなか現れず、暗い宇宙を見つめる思い。(後略)

<金子兜太選>
 ②無人なる被曝(ひばく)の町の天高し (いわき市)馬目空
 ③三十回咀嚼(そしゃく)に釣瓶落しかな (松山市)正岡唯真
 【評】(前略)馬目さん。被曝福島、秋草が寂しい。(後略)

<長谷川櫂選>
 ①物干しに子狸来たり月見るや (河内長野市)北阪英一
 ③桐一葉月の光を浴びて落つ (飯塚市)釋蜩硯
 ⑦伯父貴には伯母御がでんと敬老日(岐阜県揖斐川町)野原武
 ⑧人間も桃もおほかた皮と水 (北本市)萩原行博
 ⑨桔梗のごとき男にまだ逢はず (岡山市)三好泥子
 【評】秋の夜長の句を三句。一席。狸には狸の世界がある。それは人間の世界より少し平和にみえる。(後略)

□「朝日俳壇」(朝日新聞 2017年9月25日)
朝日俳壇
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