語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

書評:『リモート・コントロール』

2017年05月16日 | ミステリー・SF
 ニック・ストーン、37歳、英国秘密情報部の工作員、はワシントンへ出張し、帰途、旧友ケヴ・ブラウン(米国麻薬取締局勤務)宅を訪れる。そこで待ちうけていたのは、ブラウン一家の惨死体であった。隠れて生きのびた少女ケリー(7歳)を救いだし、本部へ電話する。だが、不可解なことに本部は連絡を断ち切った。宿のテレビは、ニックを殺人かつ誘拐の犯人と報道した。そこへ襲ってきた謎の男たち。ねらいは、ケリーにあるらしい。
 ホテルを転々としながら、ニックは逆襲に転じる。
 SAS時代の元同僚の支援を得てIRA暫定派の根拠地にしのびこむ。首尾よくコンピュータからデータを抜き出すが、別行動をとった協力者は殺害された。二人も、ふたたび襲撃される。
 しぶとく闘うニックのまえに待ち受けていたのは、麻薬密売に関与するIRA暫定派であり、なぜかニックたちを追う米国麻薬取締局であり、そして自分が属する英国秘密情報部の味方とは思えない行動であり・・・・。

 巻きこまれ型のスパイ小説といってよいし、黒幕追求型の探偵小説といってもよいが、犯罪者に対する犯罪で大金をせしめるスリルもあって愉しい。それ以上に愉快なのは、ニックと少女ケリーの息の合ったかけ合いである。

  「そのジーンズ。格好悪い。パパみたいにリーヴァイスの501 をはけばいいのに」
   この窮状に、こんどはファッション警察までおれを追求するのか。

 こうしたユーモアがところどころに顔を出して、血なまぐさい闘争に涼風をもたらす。
 著者アンディ・マクナブは、英国陸軍特殊部隊(SAS)の元軍曹で、SASに関するノンフィクションを2冊出している【注】。この軍歴が、銃器の扱いから侵入の道具立てまで細部のレアリティを保証している。

【注】
 『ブラヴォー・ツー・ゼロ SAS兵士が語る壮絶な湾岸戦記 』
 『SAS戦闘員 最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録』

□アンディ・マクナブ(伏見威蕃訳)『リモート・コントロール』(角川文庫、1999)
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