池袋ふくろう物語 #8
ある日のこと、昼ごはんの時間が近づいたので台所に行くと、ママが困った顔をしていました。
「ママ、どうしたの?」
「えんちゃん、パパがお昼のお弁当を忘れて仕事に行っちゃったのよ。」
テーブルの上にはパパのお弁当箱がぽつんと残っています。
今日の朝、パパは慌てて仕事に行ったので、お弁当のことをすっかり忘れていたのでしょう。
「大変だ!パパのお腹がすいちゃうから早く届けてあげなきゃ!」
「えんちゃん、パパにお弁当を届けてくれるかしら?ふくろ森の中だし、大きなところだからすぐにわかると思うんだけど。」
「だいじょうぶだよ!できるよ!」
「じゃあお願いね。えんちゃんの分もお弁当を作ってあげるからパパと一緒に食べてきなさい。」
「うん、わかった!いってきます」
ママに教わった通りに飛んでいくと、大人のふくろうたちがたくさんいる場所がすぐに見つかりました。えんちゃんのパパの仕事場です。
パパはどこだろうと探していると、えんちゃんの方に向かって飛んでくる大人のふくろうがいました。
仕事で使うヘルメットをかぶっていたので遠くからだとよくわかりませんでしたが、近くに来てパパだと分かりました
「パパ!ぼくだよ!お弁当を届けに来たんだよ!」
「えんちゃん!ママからえんちゃんがお弁当を届けに行ったよって電話があって、待ってたんだ。ここまで一人で来たのかい?えらいなぁ!」
パパはとっても嬉しそうです。お昼休憩の時間なのでパパと一緒にご飯を食べることにしました。
「パパのお仕事の場所、初めてきたよ!パパはどんなお仕事をしているの?」
「えんちゃん、あれを見てごらん。」
パパが指す方を見ると、大人のふくろうたちが細い木を植えたり、水をあげたりしていました。
「あれはなぁに?」
「木の赤ちゃんだよ。パパ達はああやって木の赤ちゃんを植えて育てる仕事をしているんだ。」
「なんで木の赤ちゃんを育ててるの?」
「木の赤ちゃんはね、育てて立派な木にすると嬉しいことがたくさん起こるんだ。」
パパは、立派な木が空気をきれいにしてくれることや立派な木にはたくさんの動物さんが集まってくるから友達がたくさんできることを教えてくれました。
「ただね、立派な木にするには何十年もかかっちゃうんだ。だから、みんなで力を合わせて育てなきゃいけない。
えんちゃんが大人になったら、パパと一緒に木を育てるようになるかもしれないね。」
丁度その時、ピーッという笛の音が鳴りました。休憩時間が終わる合図です。
パパは気をつけて帰るんだよ、と言って仕事の場所に戻って行きました。
仕事場からの帰り道、えんちゃんはパパたちが植えた木が立派な木になって周りにたくさんの動物さんが集まっているところを思い浮かべました。
みんなでたくさん遊ぶんだろうなと考えると、とてもわくわくしてきました。
えんちゃんは、大人のふくろうになったらパパと木の赤ちゃんを育てるお仕事がしたいなぁと思いながらお家を目指したのでした。