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先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

アイヌ文化「深い理解を」 道新旭川政経懇 佐々木館長が講演

2021-04-21 | アイヌ民族関連
北海道新聞 04/21 05:00
 道新旭川政経文化懇話会の4月例会が20日、旭川市内のホテルで開かれた。胆振管内白老町に昨年7月開業したアイヌ文化復興拠点「民族共生象徴空間(ウポポイ)」の中核施設、国立アイヌ民族博物館長の佐々木史郎さん(63)が「国立アイヌ民族博物館の魅力と役割」と題して講演し、施設の理念などを語った。
 佐々木さんはウポポイの基本構想で、アイヌ文化が「わが国の貴重な文化」と定義され、「先住民族の尊厳を尊重し差別のない多様で豊かな文化を持つ活力ある社会を築いていくための象徴」と位置づけられたと紹介。施設が整備された背景について「国の方針が2010年代以降変わってきたため」と解説した。
 また、今日のアイヌ民族が和人と同じ暮らしをしていると来館者が理解できるように、伝統的な狩猟などより現代の仕事に取り組む人物の紹介を重視するなど、展示の狙いを説明した。
 一方、今ではアイヌ民族の認知度は高いものの「深い理解がまだできていない」として「博物館が中心になり、より深いアイヌ文化の理解を形成したい」と強調した。(星野真)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/535431

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アイヌ文化の魅力、ラジオで発信 ハポネタイの惠原代表 5月からJAGAで

2021-04-21 | アイヌ民族関連
十勝毎日新聞 2021/04/20 10:35

ラジオ番組でアイヌ文化の魅力を発信する惠原さん(右)と、初回ゲストのsayoさん
 清水町旭山の森を拠点としたアイヌ文化発信プロジェクト「ハポネタイ」の代表、惠原詩乃さん(帯広市出身、東京都在住)は5月から、アイヌ文化の魅力を発信するラジオ番組をJAGA(FM77・8メガヘルツ)で始める。惠原さんは「アイヌ文化は身近で親しみやすいと感じてほしい」と話している。
 番組名は「anuanu(アヌアヌ) ハポネタイ母なる森から」。毎週土曜日午後5時からの30分番組で、初回は5月1日。アヌアヌは、アイヌ語で「聞いて、聞いて」の意味。
 番組ではアイヌ関連の活動に取り組むアーティストや音楽家、十勝の芸術家などをゲストに招き、さまざまな話題を提供する。リスナーとのコミュニケーションを重視し、アイヌ語で「理解してお互いの心が明るくなる」を意味する質問コーナー「ウエペケンヌ」を設ける。
 惠原さんと親交がある世界の先住民族も紹介し、アイヌ文化を通して十勝と世界をつなげる考え。
 惠原さんは企画・構成やゲストの出演交渉などを一手に引き受ける。「アイヌ文化を分かりやすく、興味が持てるよう伝えたい。清水町をはじめ十勝の人にハポネタイを知ってもらい、活動に生かしていきたい」と話す。初回の収録は今月中旬に都内で行い、アイヌアーティストsayoさんを招き、アイヌ文化を題材にしたイラスト制作に込めた思いなどを聞いた。
 ハポネタイは2009年、清水町を拠点に活動を開始した。アート展やライブ、アイヌの伝統的住居「チセ」作りなどを実施していたが、13年に活動を休止。昨年、7年ぶりの活動を東京で再開した。
 今年秋ごろには、新型コロナウイルス感染状況を見極めながら、清水町でアイヌ文化の体験イベント開催を検討している。(池谷智仁)
https://kachimai.jp/article/index.php?no=530874

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《ブラジル》危機迫るアマゾンのインディオ=金鉱夫がワクチン不正接種=フェイクニュース信じて打たない先住民

2021-04-21 | 先住民族関連
ニッケイ新聞 4/20(火) 7:52
 新型コロナワクチンの予防接種での割り込みが多発し、犯罪扱いとする法案審議などが進められている中、保健省職員が金鉱夫(ガリンペイロ)に不正接種を施したとの告発が起きた。
 不正接種を告発したのは、ロライマ州に住む先住民(インディオ)のヤノマミ族の人々だ。同族の住民組織が8日に連邦検察庁と保健省傘下の先住民保健特別局(Sesai)に提出した文書によると、Sesai職員らが金と引き換えに金鉱夫にワクチン接種を施したという。
 住民組織副会長のダリオ・コペナワ氏によると、Sesaiの看護師らは金と引き換えに、ヤノマミ族先住民特別保健区(Dsei―Y)用の発電機、ガソリン、ワクチンを金鉱夫らに調達しているという。
 ワクチンの横流しは、ロライマ州で先住民向け接種が始まった1月から起きており、先住民達は同時点で州都ボア・ヴィスタの当局に事の次第を通達していたという。
 コペナワ氏によると、文書に記載された事柄は全て事実で、先住民保護区に入り込んだ金鉱夫達が金と引き換えに薬などの調達を依頼するのは日常茶飯事だ。鉱夫達が医薬品などを持ち出してもSesaiの職員が見逃す事もあるという。
 また、先住民リーダーがSesaiの局長やDsei―Yのコーディネーターとの会合で、Sesaiの職員が夜、金鉱夫の治療に先住民用の医薬品を使った例を報告した事もあるという。
 先住民用の医薬品や資材の横流しは頻繁に起きており、昨年7月も、Dsei―Y職員による医薬品の横流しにより、ヤノマミ族のの保健事情が悪化したと報告した事があったという。
 新たに提出された文書には、「新型コロナのパンデミックで保健衛生事情が悪化している中、先住民の健康管理を担当する機関が金と引き換えに先住民のための医薬品や資材を非先住民の要望で横流ししているという事実は受け入れがたい」と明記。
 保健省は「5日の会合で、金と引き換えにワクチン横流しとの告発が行われた」事を認め、「告発が事実なら、職員の解雇や検察庁への告発などの措置を採る」との意向を表明した。
 ヤノマミ族は2万6700人以上おり、ロライマ州とアマゾナス州、約360のに別れ住んでいる。同族の居住地区には少なくとも2万人の金鉱夫が不法侵入し、金を採取している。
 先住民居住地では地域に不法侵入した金鉱夫が持ち込んだコロナウイルスによる感染者や死者が続出しており、ヤノマミ族でも、昨年8~10月の感染者は335人から1202人に急増するなど、状況は深刻だ。
 また、金鉱夫らがばらまいた「政府はお前達を殺すためにワクチンを送り込んだ」というフェイクニュースの影響で、少なくとも九つのの住民達が明確に接種を拒絶。Dsei-Yには12日までに1万5396回分のワクチンが配布されたが、接種を受けたのは20・78%の3199人のみだ。
 1月の時点では、接種拒否で余ったワクチンは医療従事者への接種に回されており、医療従事者への接種は他州以上に進んだ。一部の専門家は、先住民保護区での感染症による大量死発生への懸念を捨てていない。(13日付G1サイトより)
https://news.yahoo.co.jp/articles/39b08cb8ef4868eda385ece28a176f9deabf922a

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【夕刊】スコセッシ&ディカプリオ新作、撮影開始/マ・ドンソク、「トラップ」米リメイクで主演/アダム・サンドラー新作にポール・ダノ

2021-04-21 | 先住民族関連
ザ・リバー 2021.4.20 18:00
THE RIVER夕刊号では、その日の記事にはあげられなかったけれど注目しておきたいニュースや話題をまとめてお届け。2021年4月20日のトピックはこちら!
スコセッシ&ディカプリオ最新タッグ作、撮影開始
巨匠マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオの最新タッグ作『キラーズ・オブ・ザ・フラワー・ムーン(原題:Killers of the Flower Moon)』の撮影が、米オクラホマにて開始された。原作は『花殺し月の殺人──インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』(早川書房)。1921年にオクラホマ州で実際に起きた先住民族オセージの連続殺人事件の解決に挑む一人の英雄的な男の物語が描かれる。開始にあわせてスコセッシ監督は「遂に撮影をスタートできて感激しております」とコメントを発表。「この事件が起きた地で物語を伝えられるということは非常に重要で、当時、当事者を正しく描くために欠かせないことです」と述べている。ディカプリオのほか出演者には、ロバート・デ・ニーロ、「ブレイキング・バッド」(2008-2013)ジェシー・プレモンス、『First Cow(原題)』(2019)リリー・グラッドストーン、「ある家族の肖像/アイ・ノウ・ディス・マッチ・イズ・トゥルー」のタタンカ・ミーンズら。公開時期は不明。
『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)をはじめ、『犯罪都市』(2017)『悪人伝』(2019)などで知られる韓国人俳優マ・ドンソクが、ドラマ「The Club(原題)」にて主演・製作を務めることがわかった。本作は、韓国ドラマ「トラップ~最も残酷な愛~」のアメリカリメイク企画である。マ・ドンソクが演じるのは、ニュースキャスターとその家族を襲った謎の人間狩り集団を追う刑事。息子を亡くした刑事は真相究明すべく捜査を進めるが、そこには思いがけない真実が隠されていた、という内容の物語が展開されるという。
アダム・サンドラー主演の宇宙映画にポール・ダノ&クナル・ネイヤー参戦
『アンカット・ダイヤモンド』(2019)アダム・サンドラーと「チェルノブイリ」(2019)のヨハン・レンク監督がタッグを組むNetflix映画『Spaceman(原題)』に、『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)『スイス・アーミー・マン』(2016)のポール・ダノと、「ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則」(2007-2019)ラージ役のクナル・ネイヤーが出演する。本作は、神秘的な古代の塵を集めるために銀河の果てに送られた宇宙飛行士(アダム・サンドラー)を描く物語。『華麗なるギャツビー』(2013)『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2021年7月16日公開)などで知られるキャリー・マリガンの出演も決定済み。製作には『マジック・マイク』シリーズのチャニング・テイタムなどが就任している。
「タイガーキング」ジョー・エキゾチック描くドラマのジョー役決定
Netflixの「タイガーキング:ブリーダーは虎より強者?! 」で話題を集めたジョー・エキゾチックを描くリミテッド・シリーズで、『パーティで女の子に話しかけるには』(2017)などのジョン・キャメロン・ミッチェルがジョー役を演じることがわかった。『ゴーストバスターズ』(2016)ケイト・マッキノンが動物愛護団体のキャロル・バスキンを演じる。NBC、Peacock、USA Networkで米放映予定。これとは別に、ニコラス・ケイジがジョー役を演じるドラマ企画もある。
https://theriver.jp/210420e/

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「自分のやり方で恩返ししたかった」 台湾で個展開催の奈良さんインタビュー

2021-04-21 | 先住民族関連
中央フォーカス台湾 4/20(火) 18:03
(台北中央社)東日本大震災発生から10年の節目の年である今年、画家の奈良美智さんの個展が台湾で初めて開催された。開幕から1カ月以上経った現在でも連日、入場人数が満員に達するほどの人気となっている。画家の奈良美智さんは中央社のメールインタビューに対し、台湾での個展開催に対する思いを語った。
今回の個展は台湾の非政府組織(NGO)中華文化総会が主催。来年2月にかけて台北、高雄、台南の3都市を巡回する。公益を目的としており、入場無料で開かれている。日本の対台湾窓口機関、日本台湾交流協会が台湾への感謝を示すために開く「日台友情」行事の関連イベントに位置付けられる。
青森県出身の奈良さん。今回の個展は震災支援への恩返しとして開かれるが、開催にあたっては「自身の出身地や『日台友情』といった要素は頭になかった」と明かす。「友人が住んでいる国であり、日本が困っている時に助けてくれた国だから、自分のやり方で恩返しをしたかっただけ」と純粋な思いを吐露した。奈良さんは昨年春、台湾が新型コロナウイルス対策として日本に医療用マスクを寄贈したことに対し、短文投稿サイト「ツイッター」で蔡英文(さいえいぶん)総統に感謝の意を伝えた。その際に台湾での個展開催の意向を示したことから全てが始まったという。
今回の個展では、奈良さんが台湾のために制作した新作「Hazy Humid Day」が世界初展示された。奈良さんはこの作品に台湾への思いを込めたと説明する。台湾と日本の人々はそれぞれ異なるものの、変わらない自然と気候を自身の感性で理解し、描いたという。
奈良さんは展示作業のため、2月中旬に訪台。台湾が新型コロナの水際対策として入国者に義務付けている2週間の検疫(外出禁止)とその後1週間の行動制限措置を受けた。外出禁止期間は「全く辛いと思わなかった」と奈良さん。それどころか、あと何日か一人の時間がほしいと思ったほどで、隔離が解除された当日は寝過ごしてしまい、約束の時間に1時間余り遅れたと裏話を明かした。
奈良さんは「台湾好き」として知られ、これまでに10回前後訪台した経験を持つ。台湾には一緒に成長してきた仲間のような20数年来の友人がいるといい、「どんなに風光明媚な場所でも、結果的に最も大事なのは人」だと台湾を愛する理由を説明した奈良さん。東部・花蓮県の秘境「慕谷慕魚」の奥地でたまたまタロイモを植えていた台湾原住民(先住民)タロコ族の人々と一緒に芋植えをしたことが印象に残っているという。(葉冠吟/編集:名切千絵)
https://news.yahoo.co.jp/articles/87c2c01450f20e80e6e4e6ba062733039d8fb07b

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【試し読み】なぜ紛争は長期化し、暴力は再発するのか?『終わりなき暴力とエスニック紛争』

2021-04-21 | 先住民族関連
note 2021/04/20 10:56 慶應義塾大学出版会 Keio University Press
紅茶の産地として知られるインドのアッサム地方は、ブータンやミャンマー、バングラデシュの国境近くに位置しており、その地政学的特徴から、土地をめぐる争いが長く続いている場所でもあります。『終わりなき暴力とエスニック紛争』では、この土地の紛争を例にとり、避難民や運動指導者への聞き取り調査を通して「なぜ、政治的合意ののちも紛争が解決しないのか?」という問いに挑みました。そこから見えてきたのは、民族の共存共栄をうたう連邦制がうわべだけのものにすぎず、さまざまな問題が隠蔽されているという実態でした。
以下で、本書の問題意識を取り上げた序章の一部を掲載します。ぜひご一読ください。
***
 1990 年代、インド北東部のアッサム州西部において、土地の先住民族ボドの人々と移民出自の「よそ者」とみなされる人々の間で数回にわたり民族間衝突が起き、数十万人に上る人々が身の危険を覚えて村から避難した。暴力的な衝突が収まったのちも多くの人が帰還できず、避難民キャンプで生活していた。2011年3月、筆者は紛争による国内避難民の状況を知るための調査の一環で、避難民たちが新たに村を建設しているところを訪れた。元の村では小学校の先生をしていたというバイア・ソレンは、筆者にこう語った。
今でも自分の土地を夢に見ることがあるよ。土地をなくして、とても悲しい。われわれはジャールカンド(インド中央部の州)から来たのだから、ジャールカンドに帰れ、と言われる。しかし、ジャールカンドのことは聞いたことはあっても、行ったことも見たこともない。土地もないのに、どうやって帰れというのか。政府やいろんな人がやってきて私たちの話を聞いていく。でも、何も起きない。
 彼やその周囲の村の人々は1996年と1998年の紛争で元住んでいたところを追われ、長年避難民キャンプ生活を余儀なくされた。筆者が建設中の村を訪れたのはちょうど補償金が支払われ、元の村に戻る目途の立たない人々がキャンプを出てほかの土地に移り住み始めた頃だった。紛争の被害に遭い、攻撃の対象となったのは1990 年代を通してのべ50万人以上もおり、2010 年から2011 年の段階では5 万人から10 万人が避難民キャンプで生活していた。そのほとんどがベンガル地域に出自を持つムスリムか、アディヴァシと呼ばれる、他州出身の先住民族の人々である。
 1993 年に最初に攻撃対象となったのは、ベンガル地域に出自を持つムスリムである。そして1996年と1998年の攻撃で標的となったのは、サンタルなどインド中央部の先住民族(アディヴァシ)(※注1)の人々である。故郷では先住権を主張し、ジャールカンドという自分たちが中心の州を持った彼らだが、19 世紀から20 世紀にかけて移住してきたアッサムでは移民の扱いを受け、攻撃の対象となった。攻撃前に住んでいたところから数キロから数十キロメートルの土地で避難生活を送り、今でも元の村に戻れないかと機会をうかがう者は多い。それでも帰還はなかなか実現しない。また、避難民の一部はこの地域の先住民族のボドの人々である。1990 年代の紛争でムスリムやアディヴァシへの攻撃を始めたのはボドの武装組織だが、その報復でボドの村人たちも家を焼かれ、村に戻れない人々もいる。
 アッサム州西部のボドランド領域県(Bodoland Territorial Areas District, BTAD)(ボド領域評議会(Bodoland Territorial Council, BTC)の管轄県)における暴力は、1980 年代後半に始まったボドランド州要求運動と関連して発生している。ボドの人々の自治を達成するために全ボド学生連合(All Bodo Students’ Union, ABSU)が始めた運動は、ボド民族の学生や大衆の支持を得て大規模な動員に成功した。そして、1993 年にはボド自治評議会の設置に合意した第一次ボド協定が締結された。しかし、インド連邦政府やアッサム州政府との交渉過程で、どの領域をボド自治評議会(Bodo Autonomous Council, BAC)の管轄領域とするのかについて紛糾したことがきっかけで、ボドランドとして要求された土地の一部でムスリムが攻撃される事件が起きた。さらに1996年と1998年には前述のようにサンタルを含むアディヴァシの人々がターゲットになり、暴力の連鎖が継続した。
 なぜ、インタビューしたバイア・ソレンのように避難民となった人々は、紛争が収まったのちも土地に戻れないのだろうか。実は大規模な衝突が収まったのちも、ムスリムやアディヴァシに対する暴力は継続し、多くの村人たちは村に帰還すると身の危険を感じる状況が続いた。2003年、第二次ボド協定が締結された際には、避難民を再定住させることがインド連邦政府、アッサム州政府、ボド解放の虎(Bodo Liberation Tigers, BLT)(ボドの民族組織)の間で合意された。しかし、関連条項が実施されることはなく、多くの村人たちが村に戻れないままである。
 そして2012 年に再度、ボド民族とベンガルに出自を持つムスリムの間で暴力的な衝突が生じ、約100 人が死亡、40 万人が国内避難民となった。暴力は断続的に2、3 カ月継続し、多くの人が避難生活の長期化を余儀なくされた。2014 年には同様の事件がアディヴァシに対しても起こり、約20 万人が避難した。2010 年代の紛争では数カ月から1 年で帰還することができた人が多かったが、この地域で暴力が収束したと思っていた人々に対して大きな衝撃を与えた。政治的な合意の締結後もなぜ村人たちは元住んでいたところに帰還することができず、紛争は解決しないのだろうか。そして、なぜ暴力は再発し続けるのだろうか。
 1990 年代にこうした民族紛争で多数の死者や避難民が出たのは、アッサム州だけではなく、グローバルな現象である。1994 年のルワンダ暴動の際には、トゥチとフトゥの間で大規模な虐殺が起こり、50 万人とも100 万人ともいわれる死者が出た。また、旧ユーゴスラヴィアの解体に伴い、ボスニア・ヘルツェゴビナなどでもそれまで平和裏に共存していたセルビア人、クロアチア人、ムスリムの間で紛争が起き、25 万人を超える死者と100 万人を超える難民が出た。ほかにも東欧や中央アジア、コーカサス、アフリカを中心に紛争が起き、エスニックな紛争に対する関心が高まって研究成果が蓄積された。
 アッサム州の位置するインド北東部は、南アジアのバルカンといっても過言ではないほど民族構成が複雑であり、また紛争が頻発した地域である。この地域では1980 年代後半より武装紛争が頻発し、1990 年代には民族間の衝突もいくつか起きた。死者の数は上記のルワンダや旧ユーゴ紛争と比べれば少ない(1 回の衝突で50~100 人ほど)が、危険を感じて避難する人の数が数十万に上るのが特徴である。さらに紛争が長引いて避難民が帰還できず、また紛争が再発する事例が多いのが特徴である。
 経済的に成長を遂げ、民主主義国家として安定した政治を運営する、もしくは民主主義に移行しつつある国においての紛争は、いわゆる「破綻国家」や国家自体が機能していない地域に比べるとあまり注目を集めない。国際的な影響が少ないためであり、また当該国家が介入を拒否するので、国際的な仲介が難しく、知見の蓄積が難しいためでもある。しかし、こうした地域での被害と影響は決して小さくはない。インドは自ら「世界最大の民主主義国家」を標榜し、途上国の中では安定した政権交代と二大政党制を実現していると評されている。しかし、一方、北東部やカシミールの紛争対策では少数派をおさえつけ、人民の意思を代表して政治を行うという民主主義の根幹を危うくする側面がある。紛争の存在は北東部におけるインド政府の統治の正当性を問う問題でもある。
 本書の目的は、まず紛争や避難の現実がなぜこの地域で長引いているのか、そして暴力はなぜ再発するのかをインド北東部ボドランドの紛争を事例として分析することにある。北東部については、インド政府が調査研究や報道目的の取材を厳しく制限しているため、紛争多発地域にもかかわらずなかなかその事例が紹介されない。しかし、ボドランド、そしてインド北東部の事例は、連邦制のあり方に重大な欠陥があり、自治のあり方によってはそれ自体が紛争の再発や暴力の継続につながるということを示している。インドの連邦制は比較的エスニックな共存を可能にしたと考えられてきたが、それはさまざまな問題が隠されてきただけではなかったのか。本書で得られる知見により、「紛争後」の政治のあり方を紛争研究との連携から考察する必要性を示したい。
(※注1)アディヴァシとはヒンディー語で「先住民」を意味する言葉。アッサム州ではチョータナーグプル地域からアッサムに移住したサンタル、オラオン、ムンダなどの先住民族集団を指す。インドにおける指定トライブは州ごとに定められているが、これらの集団はアッサム州ではトライブ認定されていない。そのため公職や大学入学枠、選挙の際の留保枠を持たず、自治権を得ることも非常に難しい。なお、もともとのヒンディー語では「アーディヴァーシ」と発音するが、アッサム語では長音・短音の区別をしないため、本書では「アディヴァシ」と表記する。
***
【著者紹介】
木村 真希子(きむら まきこ)
津田塾大学学芸学部多文化・国際協力学科教授。明治学院大学国際平和研究所客員所員。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。
専門領域は国際社会学、南アジア地域研究、エスニシティ/ナショナリズム研究。
主要業績は『The Nellie Massacre of 1983: Agency of Rioters』(単著, SAGE Publications India Ptv Ltd, 2013)、『市民の外交――先住民族と歩んだ30年』(共編著、 法政大学出版局、 2013年)、『先住民からみる現代世界――わたしたちの<あたりまえ>に挑む』(共編著、昭和堂、2018年)、 「インド・アッサム州における人の移動と人権保障」(『平和研究』第53号、2019年)ほか。
https://note.com/keioup/n/n9c929794029b

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