佐藤まどかさんが、新刊をだされました。さまざまな職業を書くシリーズ(?)の三作目となるのでしょうか。
まず、表紙の絵がとてもいい。細部まで細かくて、そして雰囲気のあるすてきな絵ですよね。その絵の上にタイトルを書いてしまうんだから、デザイナーさんもまたすごい! この本が豪華なところは、中表紙もついていて、一枚、ここにも絵が。これがまた、すてきなんです。とてもいい空気感をだしています。
今回は老舗の靴店が舞台にしたお話しです。
夏希の家は、老舗の靴店。イタリアで修行したマエストロが、オーダーで靴をつくってくれます。でも、これが時間もお金もかかる。
なんとも効率が悪い仕事をしているように、夏希には見えます。
今はやりの言葉でいうと「タイパが悪い」ってやつですよね。わたしは嫌いな言葉ですが。
でも、まちがいなく品質のいいものをつくっています。ここの靴店の靴でなくてはだめだという、お客さまもかかえていて。
でも、後継者がいません。夏希はシューズデザイナーをめざしていて、、マエストロであるおじいちゃんの仕事をずっと見ているのですが、後を継ぎたいとまで思えず、まよっていて・・・・。
やはり、佐藤まどかは、文章がうまく、ぬくもりとか、老舗の風格とか、言葉にしにくい空気感をうまくかもしだしてくれます。それだから、往来堂って靴店が目にうかぶようにです。
わたしは、腰痛持ちのせいもあり、靴選びは慎重です。足が痛くない靴はすごく興味があります。そして往来堂のように、長年やっている気になる靴店もチェックしてあるにはあります。
ただ、老舗のドアをたたく勇気もないんだなー、これが。だって、本当に足にあうかどうか、つくってみないとわからないから。なかなか一歩が踏み出せません。
でも、この本を読んで、あの店にいってみようか、と思いました。
人生に一足、ぜいたくだけど、自分にぴったりな靴もいいかなって。
わたしがそういう靴とめぐりあったら、佐藤まどかさんのおかげですね。タイパが重視されて、映画やドラマを二倍速で見る今だからこそ、読んでほしい作品です。