10月15日のブログでEmillyさんがその前の週に行われたPlanetary Sciences meetingの分科会(DPS)で聞いた、Curiosity搭載のSAMの測定に関する報告について言及してます。
その内容をひとつの文章で表現すると「More data is needed.」だそうです。
Caroline Freissinetさんの発表です。
Rocknest と Yellowknife Bayで採取したサンプルをSAMで分析し、炭素含有化合物を検出した結果を報告しました。
SAMは、いくつかの炭素含有化合物を発見しましたが、それが火星由来の有機物であるかどうかは、明確になっていないとのこと。
SAMが直面している最初の問題は、結果を混乱させる可能性のある汚染物質が含まれていることです。
「SAMの有機化合物を確認する仕組み」
SAMは、N-Methyl-N-tert-butyldimethylsilyltrifluoroacetamide(MTBSTFA)という物質を満たしたいくつかの "湿式化学"セルを持っています。
この物質は、有機物質と反応して、気体に変わりやすいが、熱で分解することが困難である新規物質を形成します。
SAMのオーブンによる加熱で単純な化合物に燃焼されることなく、うまく生き残れれば、それは、火星の有機化合物の可能性が高くなり、そしてSAMのガスクロマトグラフ質量分析計を通って流れる気相に行く可能性が高くなり、そして更に、実際にそれがなんの有機化合物なのかが解明できることが期待できます。
MTBSTFA
問題は、このMTBSTFAの一部がSAM内に漏れたと思われることです。
MTBSTFAは、有機化合物です。従って、SAMが有機化合物を検出したとき、我々は、それらが火星のサンプル由来なのか、または単に漏洩MTBSTFAであるかどうかを知ることはできません。これは大きな悩みです。
Freissinetさんは、MTBSTFAの汚染を補正する方法をいくつか考えています。
ここでは、省略します。興味ある方は、原文をご確認ください。
Freissinetさんは、発表を興味深い言葉で終了させました。
「これらの化合物中の炭素の由来がどこであれ、試料中に存在する炭素化合物に多種多様性がありません。」
彼女はその点について詳しく説明しませんでしたが、自然に炭素質材料が発生している場所には、通常、炭素含有種が多くの種類存在するものです。
だから、少し奇妙です。
もうひとつ、同じセッションでMichael WongさんがSAMのQMS(Quadrupole Mass Spectrometer)を使用して火星大気中の同位体について測定したいくつかの非常に混乱した結果を発表しました。
QMSは、窒素14、窒素15、及びアルゴン40の割合を測定しました。
地球で採取された火星隕石の中に閉じ込められたガスの窒素同位体比の測定は、以前バイキングから報告された結果と一致しています。
これとは対照的に、アルゴン/窒素比でCuriosityの測定結果は、バイキングの結果や火星隕石で測定された比と合っていませんでした。
Wongさんは、「チームが広範囲に調査しているし、MSLデータを疑う理由を見つけることはありません。」と言ってます。
また、「彼らは、校正ガスを持っており、それを測定して測定値を確認している。」「だから我々は、今、頭を悩ませている」と言ってます。
彼は、可能性のある原因を推測:隕石が火星から飛び出した時点から、またはバイキングが測定した時点と現在の大気中で変化があったのか?
しかしながら、現在、バイキングが測定したオリジナルの生データ(特に、バックグラウンドの測定)を見つけることが出来ないので、バイキングの測定結果との比較は、難題であるとのことです。
*バイキングの生データは、一体どこへ行ったのでしょうか?誰かのファイルやノートの間に潜んでいるのかも・・・
Sushil Atreyaさんが本会議講演の後半で述べたように、窒素、アルゴンの割合が混乱しているのかもしれません。
SAMによって測定されたアルゴンの同位体比(アルゴン38にアルゴン36の割合)は、火星の「大気の損失の明確なシグナル」と「火星隕石が実際に火星から来たことの最良の証拠」を提供します。
バイキングによるアルゴン同位体比の測定は、不確かだったようです。
しかし、SAMによる値は、火星は、その原初の大気の50%から95%を失ったことを示しています。
DPSにおいてFreissinetさん、Wongさん、およびAtreyaさんは、異口同音に「科学者たちは、常により多くの作業が必要である。」と言ってます。
しかし、Curiosityは、間違いなく遥かに多くの作業が必要とされている状況です。
このミッションには、迅速な答えはありません。
そして、我々が質問に答えるために必要なデータを取得するまでかなり長い時間が掛かることでしょう。
Atreyaさんは、次のように言ったそうです。
「今こそCuriosityミッションのモットーは、「Sharp山か完敗か?」です。
Curiosityは、今、運転、運転、更に運転、そしてSharp山の麓に到達するために通過しなければならない合計9キロの約3分の一をカバーしています。
この後、長距離トラバースマップの "Waypoint2"に立ち寄る予定がされていますが、私が会議で人々とした会話によると、彼らは、停止をスキップして、ただ前進を進める可能性が高いと思いました。
人々は、できるだけ早くSharp山に到達させるための多くの圧力の下にあったことを私に言いました。
それは、軌道から鉱物学にとって興味深い多くの証拠を示していない道沿いの岩について科学のために時間を無駄にしないことを意味します。
これらは、私たちが探している岩ではありません。」
最後にEmillyさんは、Curiosityチームが仲間同士でこれらの混乱を共有して、対処しようとしていることが嬉しい。
そして、Curiosityをチャレンジングな方向へ進められて嬉しいとも言ってますね。
さあ、あの山に登ってもらいましょう!