「巻を措く能わず」(かんをおくあたわず)という言葉がある。「非常に面白くて一気に最後まで読んでしまう」という意味だが、まさに本書が該当する。
食事に時間を割くのが忌々しくなるほどで(笑)、年に数冊出会えるかどうかの傑作。
著者の「翔田 寛」(しょうだ かん)氏は過去に江戸川乱歩賞を受賞されている。上から目線の物言いになるが、当時から「この人は才能あり」と思っていたが、期待に違わず次から次に傑作をものにされている。
そして最新刊が本書(2022年3月26日)だ。
ネットにレビューがあったので2件ほど紹介。
「1枚の油絵の真贋を巡る調査から浮かび上がってきたのは100年以上前に起こった女性の失踪事件。婚約者を訪ねる途中、山中で忽然と姿を消した女性と明治期を代表する洋画家・高橋由一の描いた奇妙な違和感を感じさせる絵のつながりは?
明治時代の道路建設をめぐる百姓一揆や信仰、警察社会などの時代背景がしっかり描かれており、まるでノンフィクションを読んでいるような印象。調べを進めるごとに深まる謎と現代で新たに起こる殺人事件。1枚の絵から明らかになる事実をパズルのように組立て、謎を解いていく展開が面白い美術ミステリーだった。」
次に二つ目。
「実在の画家の絵をテーマにした小説で、史実とフィクションを織り交ぜた展開にリアリティがあった。日本文化史が専門の准教授・香織のもとを、かつての教え子・はるかが相談に訪れた。
彼女の実家が所有する油絵を売却しようとしたところ、贋作の疑いが掛けられたという。一枚の絵の真贋を巡る調査は、やがて絵が描かれた明治時代のある行方不明事件の真相を暴く事になる。明治時代の社会情勢も取り入れ、現代と過去を交互に描く構成がスリリングだった。一枚の絵が雄弁に語る真実に、耳を傾ける人がいて良かった。美術好きにお薦めしたい一冊。」
文中に出てくる明治期の洋画家「高橋由一」といっても、ピンと来ない方が大半だと思うがこの「鮭の絵」をご覧になったら、「ああ、あれか」という方がきっといらっしゃることだろう。
そう、教科書に載ってましたね。国の「重要文化財指定」作品です。
もし「お宝なんでも鑑定団」に出品されたとしたら「千万円」単位のお値段がつきまっせ~(笑)。
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