サイエンス的なエッセイ「飛ばないトカゲ」を読んでいたら興味を引く話題が3つあったので書き留めておこう。いずれも「目」に関係のあるお話ばかり。
1 お尻に目(34頁)
インドではベンガルトラが保護されており、生息状況は改善したが近隣の住人たちがトラに襲われることが激増した。そこで保護区の近くで仕事をするときは後頭部に「お面」を付けるという方法でトラの被害を減らしているという。
トラ以外にもライオンやヒョウも背後から獲物を襲う、つまり待ち伏せタイプの狩りをするので、「後ろにも目があるぞ」というわけだ。
ボツワナのオカバンゴ・デルタ地帯では家畜の牛がよく襲われる。そこで牛のお尻に大きな目を描くことを思いつき大々的な実験が行なわれた。
683頭の牛のお尻に目を描き、別の543頭には「クロス=×印」だけ、残りの835頭には何もしなかった。
その結果、目を描かれた牛は1頭も襲われず、クロスだけ描かれた牛は4頭襲われ、処理なしの牛は15頭襲われた。
つまり「お尻に目」は待ち伏せタイプの背後から襲う肉食獣には効果的なことがハッキリした。
以上のとおりだが、自分にも思い当たる節がある。
以前のこと、家の前にポリ袋に容れた「生ごみ」を出していたところ数羽のカラスにつつかれたことがあった。
現場に行くと、すぐに逃げて近くの電柱の上に止まりこちらが立ち去るのをじっと待っている、で、ジロリと視線を電柱の上に向けると、その瞬間に浮足だって一斉にざわざわと羽ばたきをした。
あれ~、カラスでも人間の視線を意識しているんだな(笑)。
2 目(99頁)
友人に会った瞬間、具合が悪そうだなと思う時がある。実は、何が原因でそう思うのか、さらには正確に判断できるかどうかはこれまで明らかにされていなかった。
で、スウェーデンでは19~34歳の健康な参加者22人を集め、何と彼らに注射をして実験をした。
半分にあたる11人には一時的に炎症反応を引き起こし、本人が具合が悪いと感じる程度の細菌の「内毒素の入った液体」を注射し、残りの半数には単なる「生理食塩水」を注射した。
効果の現れる2時間後に彼らの顔写真を撮り、1枚づつ5秒間だけ参加者に見せて健康に見えるかどうかを評価してもらったところ、81%の確率で具合の悪い人を当てた。
その判断の重要な根拠となったのは「目がとろんとしていて、顔色が悪い」だった。
以上のとおりだが、これまで顔色の良し悪しが健康の判断基準になるのは承知していたが、「目の焦点が定まらず、とろんとしている」は文字通り盲点でしたね。
「視線の強さ」はどうやら健康の証のようですよ(笑)。
3 メガネは知性の一部か(201頁)
メガネをかけている人がはたして知性のある人が多いのかどうか、これはかなり興味のあるテーマですね。巷にはメガネ人間が氾濫していますから(笑)。
アメリカでは、たしか「女性とメガネをかけた人間を殴ると後始末がたいへんだ」というジョークがありましたっけ。
本書によるとメガネと知性の関係を調べるために12人の男性と12人の女性の顔写真を用意し、それぞれメガネ無しのグループとメガネ有りのグループに分けた。
つまり、「同じ顔」でメガネをかけた顔と、かけてない顔をそれぞれグループ分けして、参加者に「どのくらい知性的に見えますか」と質問したところ、明らかに「メガネあり」が「メガネ無し」よりも高得点となった。
人の発明品であるメガネは1286年に登場する。つまりこのおよそ700年の間に、メガネをかけた顔と知性とを結びつける傾向が、書物や絵画といった文化的なツールによって生まれたのだろうと推察できる。
そこで、今度は「4歳児」と「6歳児」の子供を対象にした実験が行われたところ、「6歳児」の子供は「メガネありが知性的」を有意に選んだが、「4歳児」にはそのような偏りは無かった。
たった2歳の違いでそういう偏りが出ることに驚きだが、名探偵「コナン」の主人公が「メガネをかけているせいかな」という落ちがあった。
ちなみに私は50年以上のメガネ派です(笑)。
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