先日のブログで紹介した「2021年における音楽市場規模の国別ランキング」で、次のように述べていた。
「1位アメリカ 2位日本 3位イギリス 4位ドイツ 5位フランス ・・
欧米の先進国がズラリと顔を並べている中で何と日本は2位ですよ!
どうやら音楽を楽しむには政治的な安定、経済的な“ゆとり”、そしてある程度の知的な環境が必要なのかもしれないですね。」
で、既にお気付きのように「ロシア」が入っていないですね。
文学ではドストエフスキー、トルストイ・・、音楽では高名な作曲家や優れた演奏家がひしめいている「芸術大国」なのにこのありさま。
いったいどうして・・。
いろんな要因があるのだろうが、「北国の真空管博士」からこういうメールをいただいたことがある。
「音楽売り上げでロシアが圏外の理由について考えてみました。
最近無料(合法)のハイレゾ音源を探しては試聴に活用しています。
するとロシアには音楽ファイルをダウンロードできる違法サイトが沢山あることに気づきました。
アメリカや日本は著作権管理がしっかりしているので違法サイトはありません。ロシアはスポーツのドーピング違反に見られるように国自体に順法意識に欠けるところがあり、そのことが音楽ファイルの違法サイト横行の根底にあるような気がします。
更には著作権料の問題もありそうです。ロシア発の著作権料を見込めそうな音楽は意外と少ないのではないでしょうか。
クラシックは続々と著作権の切れるものが出てきますし、ロシアの現代音楽で国際的に有名なバンドは殆どありません。ロシアではどんなにCDが売れても著作権料の殆どは国外にいってしまう現実があります。
それゆえ国としても違法サイトの取り締まりに力が入らないのではないでしょうか。」
結局、そういうことなんでしょう。
そこで、根本原因である「ロシアはなぜ順法精神が低いのか」に少し分け入ってみましょうかね。
ロシアという国で真っ先に思い出すのが以前のブログで掲載したことがある「ロシア人の寿命が短い理由」だ。
「ロシア人しか知らない本当のロシア」(日経新聞社)
本書の中で一番興味を惹かれたのが第三章の中の「ロシア人はなぜ寿命が短いのか」というくだりだった。
ロシアの人口は1993年をピークにずっと減少傾向にある。その要因だが出生率低下という先進国共通の問題だけではなくアフリカ並みの異常に高い死亡率が挙げられる。
何しろロシア人の平均寿命は男性がおよそ59歳、女性が72歳で日本と比べると短命ぶりが際立っている。
1965年から40年間の間に日本人男性の平均寿命は10歳延びたがロシア人男性は逆に5歳短くなっている。
高死亡率の原因は一概には言えないがアルコールが原因の一つである。
一人当たりの年間消費量は英国と並ぶ水準だが英国はビールが主流なのに、ロシアはウォッカなどのスピリッツ(蒸留酒)が70%超でアルコール度数が高い酒の大量摂取が心臓疾患、肝硬変の要因になっている。離婚率の高さにもアルコール中毒が反映されている。
ソ連解体後の社会・経済的な混乱に伴うストレスからの逃避による飲酒、それと「ウォッカが安すぎる」ことも一因とか。
要約すると以上のとおりだが、あの広大な国土に日本と同じくらいの人口というのが驚きだが、何といっても男性の平均寿命が日本とは22歳ほども違うというのは二重の驚きである。
自分などはロシアに生まれていればとっくの昔に「お陀仏」なので、一層身につまされてしまう。
本書は女性の視点から書かれたものなのでアルコールの摂取に厳しい見方をしているが、ああいう厳寒の地では皮下脂肪に恵まれた女性は別として男性には酷だと思う。
アルコール摂取という高いハードルを前にしてロシアにおける高死亡率改善の難しさが伺えるところだが、こういう状況を踏まえてロシアの男性は「短命」に対してどういう人生哲学を持っているのだろうか。
厳寒、荒涼たる大地などの厳しい外的要因と否応なく短く終えてしまう人生を前にすると、「今が良ければいいさ」という刹那主義の蔓延からくる順法精神の低さ、ひいては違法サイトの横行も何となく許せる気になりませんかね(笑)。
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