「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

作家「宇佐美まこと」さん・・絶賛!

2023年09月09日 | 読書コーナー

手当たり次第にいろんな本を読んでいると、何となく「肌合いがピッタリくる」作家に出会う・・。

読書の楽しみって、もちろん作品の面白さもあるが好きな作家を(評判に左右されずに)独自に発掘するというのもあると思う。

そういう中のお一人が「宇佐美まこと」さん・・、愛媛県松山市在住のれっきとした女流作家である。名前に惑わされないようにね~(笑)。

ず~っと以前に搭載した読書感想を復唱させてもらおう。


☆ ミステリー「骨を弔う」(小学館)


「巻(かん)を措(お)く能(あた)わず」という言葉がある。

ご存知の方も多いと思うが、巻とは書物のことで「非常に面白くて一気に最後まで本を読んでしまう」という意味。

近年、図書館から大量の本を借りてくるのはいいものの、昔と違ってどうも一気呵成に読むことが困難になっている。

途中まで読みかけのまま、他の本に目移りすることが再々でやはり寄る年波には勝てず(笑)、己の集中力の欠如が一番の原因だろうと諦めていたところ、久しぶりに面白い本に出会った。

   

読みだしてみると、まさに「巻を措く能わず」で、ほんとうに面白い本ならこの歳でも「一気読みできるんだ。」と大いに自信がついた。

話の骨格はこうである。

「骨格標本が発掘されたことを報じる地元紙の小さな記事を見つけた家具職人・豊は、数十年前の小学生時代、仲間数人で山中に骨格標本を埋めたことを思い出す。

しかし、それは記事の発掘場所とは明らかに異なっていた。同時に、ある確かな手がかりから「あれは本当に標本だったのか」との思いを抱いた豊は、今は都内で広告代理店に勤務する哲平に会いに行く。

最初は訝しがっていた哲平も、ふと、記憶の底に淀んでいたあることを口にする。リーダー的存在だった骨格標本埋葬の発案者・真実子の消息はわからないまま、謎は思いも寄らぬ方向に傾斜していく。」

以上のとおりだが、誰にでもある小学校時代の懐かしい思い出が実は後になっておぞましい殺人事件の片棒を担いだことが判明する。

大人になって失ったものを子供の頃の懐かしい冒険の想い出を辿りつつ「真犯人と殺人の動機」の謎解きを絡めながら「今を生きる力」に代えていく筆力はなかなかのものだった。

作者の「宇佐美まこと」さんは、はじめは男性かと思っていたが読了すると女性ということが分かった。そういえば登場人物の心理描写に女性独特のきめ細かさがあったのも道理。

読解力は別にして、これまで内外のミステリーを読んだ冊数だけは人後に落ちないことを自負しているが、その経験から言わせてもらうと僭越ながらこの作家は明らかに才能がある。今後が楽しみ~。

とまあ、手放しの絶賛振りだが、その後もまったく期待を裏切らないのだからうれしくなる。

その次に読んだ「逆転のバラッド」は今年の4月に紹介しましたよね。抜粋すると、「とにかく登場人物の描写がうまくてまるで実在の人物のように生き生きと活動するのが持ち味で、それにミステリー要素も加わって最後は読者があっと驚く仕掛けが講じられている。

そして精神薄弱者やのろまなど日頃から虐げられた人間に対する眼差しがとても暖かいのが特徴で、本書も例外ではない。

宇佐美氏にかかると読後感の良きことこの上ない。

そして、今回読んだ「鳥鳴き魚の目は涙」も期待以上だった。



有名な芭蕉の「奥の細道」の冒頭に出てくる俳句「行く春や 鳥啼き 魚(うお)の目は泪」から取ったタイトルですね。旅立ちにあたり、見送ってくれる門人たちへの惜別の俳句です。

「このタイルの意味はいったい何だろう」というのが、全編を流れる通奏低音みたいなものだが、いちばん最後になって判明する・・、あっ、そういうことだったのか・・。

宇佐美ワールドには珍しいともいえる純愛ものだが、謎あり、殺人ありでミステリー要素には事欠かず、やはり上質のミステリーといっていい。

「読者レヴュー」から引用させてもらって、終わりとしよう。

「昭和初期のある華族と作庭師の生き様に、それこそ取り憑かれたようにひたすら読み続けた時間が濃密で至福だった。時代背景や内容全てがとても好み。

奥様付きの女中トミが語る華やかで幸せいっぱいの吉田家に次々に降りかかる災難と苦悩。池から出た白骨に慄き真相には驚きと悲劇しかない。だけどなのかだからなのか1人の作庭師の与える影響がとてつもなく大きく深く、夫婦を変えていくのが素晴らしくも恐ろしくもある。

タイトルの芭蕉の句と庭の見せる図があまりに切なく読み終えた時には心に穴が開いたよう。もっとこの美しい世界が続いたなら。」

まったく同感です・・・。



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