「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「江戸川乱歩賞」受賞作に思う

2024年12月10日 | 読書コーナー

「江戸川乱歩賞」とは・・、1954年、日本ミステリー界の始祖ともいえる江戸川乱歩が私財を投げ打ってつくった基金を運用して、日本推理作家協会により探偵小説を奨励するために制定された文学賞。

今年で創立70年を迎えており、過去に受賞した作家の一部を挙げると、

「西村京太郎」「森村誠一」「井沢元彦」「高橋克彦」「東野圭吾」「桐野夏生」「池井戸 潤」「荘田 寛」

といった、錚々たる作家を輩出している。

ちなみに、個人的に歴代の最高傑作と思うのは「写楽殺人事件」(高橋克彦)ではないかな~。今だに正体不明の謎の人物とされる浮世絵師「写楽」の人物考証と殺人事件が見事に融合した歴史ミステリーの快作だった。

そして、この賞の魅力は何といっても多額の「賞金」で随分長いこと「1000万円」だったが、近年は「500万円」に落とされている模様・・、随分と世知辛い世の中になった(笑)。

それが原因かどうかはわからないが、どうも最近の受賞作はイマイチの感が強いんだよねえ~。昔は受賞作といえば「百発百中」のように優れた作品が目白押しだった。

もちろんブログ主の読解力が衰えている可能性も十分考えられるので、以下あくまでも個人的な意見として読んで欲しい。

オーディオで本人がいくら「いい音」だと主張しても、他人が聴くと「それほどでもない」という、よく似たケースがごまんとありますからね(笑)。

で、はじめてそういう気にさせられたのが「カラマーゾフの妹」という受賞作だった。当時、「こういうのが受賞作とは乱歩賞も落ちたもんだ」とガッカリしたことだったが、これを皮切りに次から次に「こんな作品が・・」と出現してくるのだ。

たとえば、「蒼天の鳥たち」「老虎残夢」と枚挙に暇がないが、令和6年受賞の最新の「遊郭島心中譚」には本当にがっかりした。



読み進んでいくうちにワクワクさせるものがない、もう救いようがない作品だと思うが、こんな作品を7名の「審査員」(現代作家)たちが寄ってたかってよくもまあ推したものだと不思議~。

で、大いに期待して読んだだけに、その反動も大きくなる(笑)。

くそっと思いながら、過去の受賞作品をまとめて4冊借りてきて改めて検証することにした。これはオーディオで思うような音が出ないときの荒療治に等しい(笑)。



女性作家が3名を占めている! この世界でも女性の進出が目覚ましいようだが、結論からいえば、少し救われた思いがした。どれもこれも結構面白いのだ(笑)。

それぞれの感想はネットから引用。

「北緯43度のコールドケース」

「博士号を持っている警察官、沢村は、事件解決までの糸口を見つけたり、監察官調査での対応などで知性を感じさせる。しかし、どこか不器用で他の人とのやり取りや社会に対する不信感などは共感する。

終盤の展開はすべてが繋がっていって大変面白かった。古びた倉庫で見つかった少女の遺体が、事件に巻き込まれてとはいえ、あまりにも悲しく辛い。次巻の数学の女王も読んでみたい。」

「此の世の果ての殺人」

「2ヶ月後、地球に落下する隕石のために破滅が確定している世界で起きた殺人事件。それを追う小春とイサガワはどちらも名前の一部しか明かされないので性別誤認トリックかと思ったけど違いました。

人物の造形にやや極端さと掘り下げ不足を感じるのと、ポストアポカリプスの一歩手前の世界観のはずなのに、この日本でここまでイカれた状況になるかなという疑問はあるものの、総じて言えば面白かったです。史上最年少での乱歩賞受賞者とのことで、これからに期待します!」

「完盗オンサイト」

「オンサイト(=クライミング用語で、初めてのルートを一切の情報を持たずに初見で完登すること)をタイトルに掲げた通り、クライミングの話ではあるが、その対象が岩山ではなく皇居というのがユニーク。子供を置いてくる部分は酷い気がしたし、そのほかにもいくつか気になる部分はあったものの、全体的には読みやすく面白かった。」

「襲名犯」

「連続殺人犯の死刑執行後、同じ異名を現場に記した事件が発生。犯人は何を継いだのかが気になり読み進めた。過去の事件記録から主人公との接点が浮かび、時折挟まれる回想シーンでは誰が誰かを考えさせられ推測する面白さがあった。

しかし被害者の数は多く、主人公が抱える心の闇が物語全体を覆っていてどんよりと重い、乱歩賞らしいムードだ。後半オリジナル犯の足跡が明らかになると、主人公との共通点を意識させられ、さらに類友というワードが浮かんだ。模倣犯だけれど、動機はすべからく本人のものとして犯行に至った同化が興味深かった。」

結局、以上を通して「江戸川乱歩賞」受賞作品ははじめから完成された作品として読むのは不適当で、まさにプロ野球の「新人賞」クラスとして扱うべきものだと悟った。

「いまさら気付くのが遅い!」と言われそうだが(笑)

そりゃそうだよねえ、過去の蓄積と人生経験に乏しい新人が最初から「MVP」並みの力を発揮できるはずがないもの。

で、過去の受賞者から推測すると売れっ子作家に成長するのは1/10くらいで、プロ野球のドラフト上位選手がその後に活躍するのと同じくらいの確率でしょうか。

「筆力=書く才能」も「運動神経」と同様にやはり難しい世界だと思いました。

その意味で、まったくアイデアなどの発想の枯渇が感じられない「東野圭吾」さんは敬服に値しますね~。



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