NIHシンドローム(Not Invented Here syndrome)という言葉があります。他の国や他の業界で作られたことを理由に、その商品の採用を拒否することを「病気」にたとえています。Not Invented Here、つまり「ここで発明されたものではない」から、ここでは使えないというわけです。
私たちが企業に研修の提案をするときに、このNIHシンドロームに遭遇することがあります。
ある中堅電機メーカに研修プログラムを提案したときのことです。
その会社の教育担当課長にひと通りプログラムの説明したところ、大変前向きな反応がありました。
「よくできた研修プログラムですね。」と担当課長。
「はい。いくつかの会社で実施して大変好評でした」と私。
「ほう、どこの会社ですか?」
「X社とY社です。」
「え?それは建設業と食品メーカですよね。電機メーカ向けのプログラムじゃないんですか?」
「電機業界では実績がありませんが、エンジニアが対象ですので御社にも最適だと思いますが。」
「うーん・・・他の業界は一緒かもしれないけど、電機業界って特殊なんですよ、本当に。」
実は全ての会社がこういう反応を示すわけではありません。私たちの説明を聞いて「なるほど」と興味を示す担当者もいます。しかし残念ながら「うちの業界は特殊だから・・・」という反応の方が多いようです。中には他業界の話が出たとたん、それ以降の話に一切耳を貸さない人もいます。
うちの業界は特殊、我が社は特殊という発言の裏には「他の連中と一緒にされたくない」というプライドが見え隠れします。だからと言って耳をふさいでしまうと、貴重な情報やアイデアを逃してしまうことになります。それによる損失は決して小さくはありません。
あくまで私の感覚ですが、NIHシンドロームにかかっている割合は規模に関係なく、業績はやや悪いか下降気味の企業が多いように思います。
業界や業種に関わらず、良さそうなものは積極的に情報を集め、自社に適用できないかを考える教育担当者は間違いなく優秀です。知識量もさることながら、常に考える習慣が身についているため、結構鋭い指摘や厳しい要求をしてきます。
私たちはそうした指摘や要求を歓迎します。研修を少しでも良いものにしようと思うなら、それは自然なことだからです。
(人材育成社)