共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

一工夫

2011年06月30日 20時06分57秒 | 日記
1レッスンは30分と決まっているので、その決められた時間の中でどう起承転結をつけて時間通りに終わるか…というのが、音楽教室講師の最重要課題の一つです。その時間管理のために時計は不可欠なアイテムなのですが、生徒によっては時計をチラチラ見ながら、その場を何とかのらりくらりとやり過ごそうとする奴もいるものなのです。

勿論、「そんなことされないような魅力的なレッスンをすればいいではないか」と言われてしまえば至極ごもっともなのですが、私もそんな完璧な人間ではありませんから、みんながみんな…というわけにいかない時もあるわけです。

だからと言っていちいち時計をチラ見することを注意してばかりもいられませんし、でもそれを捨て置くのも何だかシャクにさわる…そこで考えたのが写真の方法です。

これはピアノの上の光景なのですが、写真立てを置いてその陰に時計を置くことによって、目隠ししてしまうわけです。で、どうせ隠すなら『付加価値』のある目隠しを…ということで、いわゆる《名画》と言われているものの写真や絵葉書を入れておくのです。

内容は季節やその時の気分によって変わりますが、あまり強烈なもの…ピカソとかダリとかクリムトとか岡本太郎とか…でないものを選んでいます。だからレオナルドやラファエロの時もあれば、フェルメールやレンブラントやルーベンスの時もあれば、ヴェラスケスやドラクロワの時もあれば、シスレーやピサロやモネやルノアールの時もあれば、セザンヌやゴッホの時もあれば、尾形光琳や円山応挙や伊藤若冲の時もあり…と様々です。

この中の絵は一月毎にとりかえます。すると一年で12点の絵とふれあうことになるわけです。そうすると、最初興味を示さなかった子も「あ、また絵が変わった」というところから、自然と絵に親しみを持ってくれるようになるわけです。今までにも、これをきっかけにして展覧会に足を運ぶようになった子達が何人もいますので、思わぬ情操教育にもなっていて一石二鳥です。

6月はのクロード・モネ作《Le Pont japonais(日本風の橋)》を飾りました。これは今、国立新美術館で展覧会を開催しているワシントンナショナルギャラリー所有の作品ですので、この絵そのものが出展されているかどうかはわかりませんが、これをきっかけにして「六本木まで出かけてくる」と言っていた生徒がいます。

ともすると、音楽教室というところはある種狭い部屋の中で、閉鎖的にレッスンをこなすようなことになりがちなのですが、かつて数多巨匠の作品が演奏された場には音楽だけではなくて、絵があり、彫刻があり、時代のトップモードが集い、詩が読まれ、政治が語られていたわけです。だから現代の、しかも芸術教育の場において、せめてレッスン空間に、それに相応しい上質の絵を飾ることによって少しでも子供達の総合的情操教育に寄与していけるよう、これからも続けていきます。

明日から7月なので、帰ったらまた中身を考えます。
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