共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

朗読劇《ロバのおうじ》

2019年06月18日 22時41分22秒 | 音楽

今日は我が家からそう遠くないところにある、厚木市長谷の蓬莱山曹洞宗長谷寺というお寺に来ました。今日はこちらで、リュートと朗読による朗読音楽会が開催されました。

平日の昼間でしたが、それでも会場となった本堂には20人程の聴衆が集まりました。はじめに



リュート奏者永田斉子女史によるルネサンスリュートのコンサートがありました。『グリーンスリーヴス』や『スカボロウ・フェア』といった馴染み深いメロディのものや、イギリスの名リュート奏者で作曲家のジョン・ダウランド等の作品が演奏され、居合わせた聴衆はその繊細な音色に聞き入っていました。

休憩時間を挟んで、朗読とリュートによる朗読音楽会が始まりました。テキストはグリム童話による《ロバの王子》です。



ある国の金持ちの王様と衣装持ちの王妃様には子供がありませんでした。ある日、森の奥に何でも望みを叶える強大な力を持った魔法使いが住んでいるということを聞いた王様夫妻が訪ねていって子供を望んだところ

「金貨を一杯に詰めた袋33個くれたら、望みを叶えて進ぜよう。」

と言われます。早速城に帰って金貨を用意していた王様ですが、普段から全財産を勘定することを日課としている王様はそんな大金を魔法使いに渡すことが惜しくなり、それぞれの袋に鉛を金メッキした偽金貨を混ぜ込んで支払いを誤魔化すことにしました。

しかし、その企みは魔法使いに簡単に見破られてしまいました。腹を立てた魔法使いは約束通り子供を授ける魔法の呪法を始めますが、

「生まれた子供は醜いロバの姿をしているだろう。その容姿を気に留めず、心から愛される日がくるまで、人間の姿になることは出来ない!」

という呪法を唱えてしまいます。果たして生まれた待望の赤ん坊は、尖った耳に奇妙な尻尾、全身を灰色の毛に覆われたロバの姿でした。

戸惑いながらも、王様と王妃様はロバの王子にお辞儀の仕方や食事のマナー、勉学やダンスの踊り方といった『王子としての心得』を教えます。しかし、二人共ロバの姿をした我が子に全く興味が無い様子で、役人や使用人たちにもまともに相手にしてもらえない辛い日々が続いていました。

ある日、お城に旅のリュート弾きが逗留すると、ロバの王子はリュート弾きに

「私にリュートの 弾き方を教えて下さい。」

と頼みます。求めに応じてロバの王子のリュートと歌のレッスンを始めると王子はメキメキと腕を上げていき、遂には

「私が教えて差し上げられることは何もございません。」

と言わしめるまでになりました。

ある日、素敵な曲が出来たので、ロバの王子は早速母君である王妃様のもとに参じてリュートを爪弾きながら歌いました。また、父君である王様のもとにも参じて歌を披露しました。しかし二人共何の関心も示さず、むしろ醜い姿のロバの王子を邪険にするばかり…。絶望にうちひしがれたロバの王子は、リュートだけを持ってそっとお城を抜け出し、旅に出ました。

流れ流れて別の国に辿り着いたロバの王子は城の門番に王様への謁見を申し込むと、話をするロバの来訪を面白がった王様にダイニングに呼ばれました。そこでリュートを演奏すると、王様と娘であるお姫様が食事を忘れるほどにじっと聴き入り、二人共ロバの王子のリュートと歌の腕前をすっかり気に入って、お城への逗留が許されました。

その後、ロバの王子はお姫様付きのリュート奏者としてしばらく楽しく暮らしていましたが、ある時お姫様の元に三人の他国の王子が求婚にやって来るという話を耳にしました。このまま自分がお城に留まるのは良くないと思い立ったロバの王子は、密かにお城からの出奔を図ったのですが…



朗読中、後ろのスクリーンにプロジェクターで絵本の絵が投影されました。話の中にリュートを演奏する場面が出てくる毎に、敢えてこの物語のために作られた新曲ではなくシチリアーノやガリヤルドといったリュートのための古典作品がルネサンスリュートで演奏され、マイクを使わない朗読劇に彩りを添えていました。30分程の朗読劇が終わると



演者に惜しみない拍手が送られました。

こうした小規模な音楽イベントというのも、なかなか興味深いものでした。もしかしたら、こうしたことはリュート以外でも出来るかも知れないと、いろいろな可能性を感じた朗読音楽会でした。
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