昨日からの冷たい雨も早朝には上がって、眩しい陽光が照らすようになりました。それでも、昨日の引き取り訓練の疲れからか、なんとなくスッキリしない気分が続いていました。
ところで、今日5月2日はアレッサンドロ・スカルラッティの誕生日です。
アレッサンドロ・スカルラッティ(1660〜1725)はバロック期のイタリアの作曲家です。特にオペラにおけるナポリ楽派の始祖と考えられている人物で、多数のクラヴィーアソナタを遺したドメニコ・スカルラッティ(1685〜1757)の父親でもあります。
アレッサンドロ・スカルラッティはシチリア島のトラーパニもしくはパレルモで生まれました。1679年にローマで作曲したオペラが当時ローマに滞在していたスウェーデン女王クリスティーナの目に留まったことで、アレッサンドロはスウェーデンの宮廷楽長となりました。
1684年2月からナポリ総督の宮廷楽長となったアレッサンドロは、ナポリで長編のオペラを作曲しました。しかし1702年、スペイン継承戦争の渦中にあったナポリを逃れたアレッサンドロは、戦争の終結までの間各地を転々とすることになりました。
1707年にヴェネツィアとウルビーノを訪れた後、1708年にアレッサンドロはナポリに復帰して1717年まで留まりました。この頃にナポリの人々はスカルラッティの音楽に飽きていたようですが、一方でローマではスカルラッティの音楽を評価する声が高かったようで、ローマのカプラニーカ劇場で上演されたオペラの数々は高い評価を受けました。
そんなアレッサンドロ・スカルラッティの誕生日である今日は、アリア《すみれ(Le violette)》をご紹介しようと思います。
《すみれ(Le violette)》は、オペラ《ピッロとデメートリオ》の中の登場人物である牧童のマーリオが歌うアリアです。朝露に光る可憐なすみれの花が恥ずかしそうに葉っぱに隠れつつ、大胆に愛を求める僕のことを咎めている…そんなすみれを恋人に見立てた可愛らしい曲です。
オペラ《ピッロとデメートリオ》は現在では上演されることはありませんが、このアリアは有名でイタリア古典歌曲集にも単独で掲載されています。内容は
Rugiadose,odorose
violette graziose,
voi vi state vergognose,
mezzo ascose―fra le foglie
e sgridate le mie voglie
che son tropp'ambiziose!
露に濡れて香る 雅な菫たちよ
お前達は恥らいながら
半ば葉陰に隠れ
あまりにも野心的な
私の欲求をとがめている
というもので、動画検索してみるとこのアリアを歌っているのは圧倒的に女性の方が多いのですが、本来は男性の役柄の歌です。
そんなわけで、今日はアレッサンドロ・スカルラッティの名アリア《すみれ(le violette)》をお聴きいただきたいと思います。20世紀の名メゾソプラノ歌手のひとりテレサ・ベルガンサ(1933〜2022)が1984年に行った日本公演の映像で、短くも愛すべきアレッサンドロの名曲をお楽しみください。