共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

オペラ鑑賞記 《愛の妙薬》編

2012年05月04日 23時51分05秒 | 音楽
練習から帰って来たのはいいのですが、何だかテレビがつまらないのと、昨日鑑賞した《魔笛》の傍に置いてあって「そう言えばこんなのあったなぁ…」というDVDがあったので、急遽これを鑑賞することにしました。ドニゼッティの《愛の妙薬》です。

これは2002年に東京・新宿の新国立劇場での公演です。
(何故か製品番号がありません)


アディーナ…ヴィクトリア・ルキアネッツ

ネモリーノ…ジュゼッペ・サッバティーニ

ドゥルカマーラ…ナターレ・デ・カロリス

ベルコーレ…アンジェロ・ヴェッチャ

ジャンネッタ…五十嵐麻利江

東京フィルハーモニー交響楽団

藤原歌劇団合唱部

指揮…パオロ・オルミ

演出・美術・衣装…ウーゴ・デ・アナ


この公演は演出がちょっと面白いのです。舞台は19世紀末のフランスの片田舎、舞台上は工場のようなセットかが組まれ、窓の外には沢山のひまわりが咲いています。そこへネモリーノ役のサッバティーニが客席後方から登場して物語が始まるのですが、通常だと農村の草食系男子のネモリーノが、ここでは汚れたスモックを着た、ちょっと顔色の悪い画家の姿で、どこかで見た『ひまわり』の絵のカンヴァスを持って登場します。

『ひまわり』と『画家』…だいたい分かって頂けるでしょうか?ライナーノーツには『ゴッホを意識した画家の姿』という、何ともまだるっこしい書き方がしてありますが、要するにネモリーノをゴッホにしちゃったのです。

サッバティーニのレパートリーは、例えば《椿姫》のアルフレードや《ファウスト》のタイトルロールのような割とすかした色男役が多いのですが、ここでは彼のトレードマークであるストレートの黒髪や髭をくしゃくしゃの赤っぽい色に染めて徹底的にダッサいゴッホ…じゃない、ゴッホっぽいネモリーノ(ややっこしいな…)を演じています。なんてったってこのネモリーノ、事あるごとに大きなカンヴァスを持って歩いているのですが、これがことごとくゴッホの絵なものですから…しかも妙薬を買うために絵を売ろうとするんだけど、ゴッホと同じく売れないし…。勿論声に関しては何の心配もありません。有名な《人知れぬ涙》は、聴いているだけでこっちがジーン…としてきます…:(T-T):。

アディーナ役のルキアネッツは、声質が若干金切り声っぽく聞こえる瞬間があるので人によって好き嫌いがあるかも知れませんが、確かなテクニックは安心感があります。ネモリーノやドゥルカマーラと1対1でやり合う場面でも、アディーナの可愛さとしたたかさを存分にみせてくれます。

ドゥルカマーラ役のカロリスは、出てくる時の衣装が『チャーリーとチョコレート工場』のジョニー・デップみたいな格好で、インパクト大です。歌唱は若干突っ走る部分もありますが、こちらのイタリア語早口言葉も素晴らしいです。

ベルコーレ役のヴェッチャは演技が若干イモですが、声はなかなかいいです。この人が《椿姫》のジェルモン父さんなんかやったら素敵かも知れません。

この公演では合唱がいろいろな場面で踊らされます。こういう時、外国の歌劇場の合唱団だったら率先して踊るのでしょうが、これがどうも日本の合唱団だと、どこかに照れが臭います(特に男声…)。天下の藤原歌劇団合唱部、しっかりしてもらいたいものですな。

とにかくこの映像ではサッバティーニの歌唱を堪能することをお勧めします。今でもタワーレコードあたりだと置いてありますので、興味のある方は御覧になってみて損はないと思います。

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