朝のうちは曇天模様だった天気も少しずつ回復して、午後からは晴天も覗くようになりました。それでも午前中に曇っていたせいかそこまで気温も高くならず、快適に過ごすことができました。
今日はとにかくゆっくりと過ごそうと思って、昨日のうちに買いだめしておいたもので済ませることにしていました。自分ではあまり自覚していないのですが、それでも個別学習支援の仕事をしているうちに、いらぬストレスや疲れを溜め込んでいるようです。
今日はゆっくりと音楽を聴いて過ごしていましたが、その中で久しぶりに引っぱり出して聴いていたものがありました。それが
マックス・ブルッフ(1838〜1920)作曲の《クラリネット・ヴィオラ・ピアノのための8つの小品 作品83》という作品です。
この曲は1908年頃に作曲された《クラリネットとヴィオラのための二重協奏曲 作品88》と同様に、クラリネット奏者であった息子マックス・フェリクス・ブルッフのために書かれたと考えられています。初演の時期ははっきりしませんが、1909年にはマックス・フェリクスが演奏していることが確認されています。
この作品はブルッフが教職を退いた1910年に出版され、アルバニア公妃ゾフィー・ツー・ヴィートに献呈されました。全体を晩年に差し掛かったブルッフの郷愁の感情が満たしていて、中音域に偏った編成も相まって内省的な雰囲気が作品を支配しています。
《8つの小品》は、モーツァルトの《ケーゲルシュタット・トリオ》やシューマンの《おとぎ話 作品132》といった前例に倣い、クラリネット・ヴィオラ・ピアノという編成で書かれています(クラリネットにはヴァイオリン、ヴィオラにはチェロの代替パートも用意されています)。作曲段階でブルッフは複数の小品(おそらく第3、5、6曲目)にハープを加えることを考えていたようで、楽譜にはハープチックなパッセージが見られます。
第2・第4・第7曲以外はかなりゆったりとしたテンポが設定されていて、その分ヴィオラとクラリネットという中音域の楽器の魅力が引き出されています。特に最後の第8曲の切々と歌うメロディには胸を締め付けられるような悲しみが満ち満ちていて、やがて第一次世界大戦を迎えようとする不穏な時期に書かれたことを含めて、ブルッフの悲しい胸の内を垣間見るような思いにさせられます。
そんなわけで今日はブルッフの《クラリネット・ヴィオラ・ピアノのための8つの小品》をお聴きいただきたいと思います。ジャネット・ヒルトンのクラリネット、今井信子のヴィオラ、ロジャー・ヴィニョーレのピアノで、秋に相応しい中音域の魅力満載の室内楽の名曲をお楽しみください。