今日は、勤務先とは別の小学校の放課後子ども教室のある日でした。今日から2月になったので、帰りの歌を《春よ来い》に替えることにしました。
《春よ来い》といっても松任谷由実の曲ではなく、童謡の《春よ来い》です。
童謡《春よ来い》は相馬御風(1883〜1950)作詞、弘田龍太郎(1892〜1952)作曲の童謡で、1923年に雑誌『金の鳥』に発表されたのが初出とされています。因みに、歌詞に登場する「みいちゃん」のモデルは、作詞者である御風の実子の文子(あやこ)さんです。
この曲もそうですが、明治期以降の日本の歌曲にはある特徴があります。それが『ヨナ抜き音階』が用いられていることです。
『ヨナ抜き音階』とは西洋の7音音階から4番目のファと7番目のシの音を省いた音階のことで、例えばハ長調だと
『ドレミソラ(ド)』という5つの音で成り立っています(上の楽譜で見ても《春よ来い》にはファとシの音が一回も出てきません)。明治期に海外からもたらされた西洋音階は当時の日本人には馴染が薄く難解だと思われていたこともあって、そこから半音を形成するファとシという2つの音を省いて日本で古くから親しまれている5音階(ペンタトニック)にしたものを俗に『ヨナ抜き音階』と呼んできました。
ちょっと難しい話かも知れませんが、この『ヨナ抜き音階』はかなり様々な曲に使われています。例えばピアノをお持ちの方に是非試していたたきたいのですが、上の楽譜の『ヨナ抜き音階』を
〽ドーレミソー、ラドレミーミミミー
と登って弾いていくだけで、北島三郎の名曲《函館の女》になります。
『ヨナ抜き音階』は日本の人々に受け入れられ、数多の唱歌や童謡、演歌やJ-POPのメロディに多用されてきました。また、《蛍の光》や《アメイジング・グレイス》といったスコットランド系の音楽にも『ヨナ抜き音階』が使われていることから、日本語の訳詞が充てられて古くから日本人に親しまれてきました。
そうした話をごく簡単にしてみたのですが、子どもたちよりもむしろ周りの大人たちの方にウケてしまった感がありました(汗)。でも、子どもたちも何となく『ヨナ抜き音階』というものに興味をもってくれたようで、一応私が意図していたところは伝わっていたようでした。
そんなわけで、今日は童謡の《春よ来い》をお聴きいただきたいと思います。『ヨナ抜き音階』を存分に活かして春を待ちわびる心を歌った名曲を、存分にご堪能ください。