★ 永井龍男さんの「青梅雨」(新潮文庫)から「狐」を読んだ。
★ 永井龍男さんといえば、長年芥川賞の選考委員を務められ、「限りなく透明に近いブルー」や「エーゲ海に捧ぐ」の選考を機に、委員を辞められた方だと思う。選考委員の高齢化もあるが、芥川賞の転機だったのかも知れない。
★ 「狐」は地味な作品だ。主人公は、父親が一代で築いた会社を義理の兄たちに任せ、自らは名ばかり重役で経営には関与せず、母親と同居するのを良いことに、高額な報酬を得て暮らしていた。そこそこ財のある家から妻を得て、5人の子にも恵まれている。
★ ところが、時代は太平洋戦争を挟んで大きく変わる。折しも頼みの母親もなくなり、会社からは報酬の大幅な減額を告げられた。家財を売って何とか生計を維持し、妻の実家からの援助は頑なに拒んでいる。プライドが許さないようだ。
★ 報酬があることを良いことに、男は酒を飲んで昼夜を楽しんだ結果、もはやアルコール中毒の症状さえ出ている。気にいらないことがあると妻に暴力を振るい、子を懐柔しようとするが、彼らは母の味方となる。破滅的な未来を予想させながらも、母と子は何らかの動きを始めようとしているようだ。
★ 昔はわけもなく威張り散らす男が多かったんだね。それを許す世間の風潮が根強かったんだね。まだ女性の社会進出も少なかったし、女性は耐えるしか仕方がなかったんだね。姑のイジメやだらしない夫と生活しながら子育てをする、母親の強さも印象的だった。
★ 永井龍男さんといえば、長年芥川賞の選考委員を務められ、「限りなく透明に近いブルー」や「エーゲ海に捧ぐ」の選考を機に、委員を辞められた方だと思う。選考委員の高齢化もあるが、芥川賞の転機だったのかも知れない。
★ 「狐」は地味な作品だ。主人公は、父親が一代で築いた会社を義理の兄たちに任せ、自らは名ばかり重役で経営には関与せず、母親と同居するのを良いことに、高額な報酬を得て暮らしていた。そこそこ財のある家から妻を得て、5人の子にも恵まれている。
★ ところが、時代は太平洋戦争を挟んで大きく変わる。折しも頼みの母親もなくなり、会社からは報酬の大幅な減額を告げられた。家財を売って何とか生計を維持し、妻の実家からの援助は頑なに拒んでいる。プライドが許さないようだ。
★ 報酬があることを良いことに、男は酒を飲んで昼夜を楽しんだ結果、もはやアルコール中毒の症状さえ出ている。気にいらないことがあると妻に暴力を振るい、子を懐柔しようとするが、彼らは母の味方となる。破滅的な未来を予想させながらも、母と子は何らかの動きを始めようとしているようだ。
★ 昔はわけもなく威張り散らす男が多かったんだね。それを許す世間の風潮が根強かったんだね。まだ女性の社会進出も少なかったし、女性は耐えるしか仕方がなかったんだね。姑のイジメやだらしない夫と生活しながら子育てをする、母親の強さも印象的だった。