じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

稲見一良「セント・メリーのリボン」

2019-10-24 16:29:09 | Weblog
☆ 稲見一良さんの「セント・メリーのリボン」(光文社文庫)から表題作を読んだ。

☆ 失踪したり、盗まれた猟犬を探す私立探偵の話。人付き合いは悪そうだが、アウトローの人間にもひるまない。相棒のジョー(靴箱の中に捨てられていた犬。彼が手塩にかけて育てた)とともに、自分の信じた道を突き進む男。カッコいい。

☆ 今回の仕事は、姿を消した盲導犬を探すこと。地道な探索で居所を見つけたのだが・・・。

☆ ハードボイルドタッチ。それでいて最後はホロっと来てしまった。クリスマス・イブにセント・メリーというのもお似合いだ。

☆ リボンを結ばれたジョーの照れたような表情も目に浮かぶ。
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有栖川有栖「ロシア紅茶の謎」

2019-10-24 13:43:17 | Weblog
☆ 昼下がりのコーヒーブレイク、あるいはティータイム。ちょっこと読書するには短いミステリーなどがよい。

☆ 有栖川有栖さんの「ロシア紅茶の謎」(講談社文庫)から表題作を読んだ。

☆ 新進の作詞家がパーティーの最中に殺される。毒はロシア紅茶から検出された。犯人は誰か、どんなトリックを使ったのか、という典型的なパターン。そのまま45分番組がつくれそうな内容だった。

☆ それにしても推理作家というのはいろいろなトリックを考えるものだ。
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光原百合「十八の夏」

2019-10-22 17:48:40 | Weblog
☆ 光原百合さんの「十八の夏」(双葉文庫)から表題作を読んだ。

☆ 浪人生の三浦信也はジョギングの足を止め、川べりでスケッチをしている女性を見た。彼は7歳年上の彼女に魅かれてしまった。

☆ ここまでならよくある恋愛モノだが、彼女には秘密があった。そして彼にも秘密があった。

☆ 朝顔に込められた想いとは。

☆ 飾り気のない彼女のセリフがいい。
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馳星周「煉獄の使徒(上)」

2019-10-22 10:51:44 | Weblog
☆ 馳星周さんの「煉獄の使徒(上)」を読んだ。上巻だけで827ページ。なかなかのボリュームだった。

☆ 天才詐欺師はグルと呼ばれるようになった。元左翼の腕利弁護士は、侍従長と呼ばれるようになり、カネの亡者となった。

☆ 警察組織に裏切られた公安警察官、彼は自分を切り捨てた連中への復讐に執念を燃やす。そして彼の背後には警察官僚の権力争い、政治家の派閥闘争。

☆ 黒く淀んだ人々がカルト教団「真言の法」を育てていく。

☆ 信者を出家させ、全財産を巻き上げる。息子や娘を取り返そうとする家族、それを助ける弁護士。教団は邪魔な弁護士一家を殺害、遺棄する。

☆ 宗教法人と認可された教団。グルは政治への進出を命令する。参議院選挙、異様な格好で異様なダンスと歌。「グルのおっしゃることに間違いはない」と奔走する信者。しかし負けた。揺らぐグルの威信。そこは天才詐欺師、敗北は陰謀である信者たちに吹聴。悪に満ちた世界は変えねばならないと、武装化を始める。

☆ 離島でのセミナー。信者をそこに集め、東京にボツリヌス菌を撒く計画。ハルマゲドンの自作自演。しかし、失敗。

☆ 熊本では教団施設をめぐり住民とのトラブルが激化。富士山のふもとでは大きなプラント建設が。武器や毒ガスの製造がいよいよ始まろうとしている。

☆ 「うーん」、うなるような展開だ。下巻に続く。
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映画「七つの会議」

2019-10-22 02:01:06 | Weblog
☆ 映画「七つの会議」(2019年)を観た。

☆ ある企業のリコール隠蔽問題をドラマチックに描いている。

☆ ストーリーはともかく、野村萬斎さんを中心に、香川照之さん、片岡愛之助さんの「半沢直樹」メンバーの熱演が見どころ。

☆ 最後、野村萬斎さんが演じる八角民夫が日本の企業風土について語っているところが興味深かった。日本人にとって会社は、お家であり藩なんだね。だからこそ会社の常識は世間の非常識(違法)なんてことになるんだね。

☆ 企業っていうのは宗教団体にも似ている気がした。

☆ そんな日本的経営も末端ではだいぶ変わってきているように思う。でも、上層部は相変わらずなのかな。

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浅田次郎「憑神」

2019-10-21 19:55:13 | Weblog
☆ 浅田次郎さんの「憑神」(新潮文庫)を読んだ。面白かった。

☆ 江戸から明治へ、幕府が瓦解する中、代々将軍の影武者を担ってきた(といっても太平の世に出番はなく、ひたすら武具を管理するのみの閑職だが)別所家の次男坊、彦四郎が主人公。

☆ 家格が上の他家の養子となるが、男の子をもうけるや離縁に。実家に戻って居候の身となる。憂さ晴らしに酔って、転んだところに古びた社、願をかけたところ神に憑かれてしまう。よりにもよって、貧乏神、疫病神、そして死神。

☆ 物語はそうした神々との「交流」を通じて、面白おかしく進んでいくのだが、単にコミカルな作品ではない。

☆ 途中で「大義にに生きるのではなく、小義に生きる足軽の道」(203頁)と徒士としての矜持を語った彦四郎、崩れ行く幕府、廃れ行く武士道を見るに見かねて、身をもって時代に挑んでいく。それは滅びの美学とでも言おうか。

☆ 「喧嘩ってのァ、勝ち負けじゃねえ。勝ちっぷりと負けっぷりだ」(313頁)この言葉をかみしめて、時代を変えるための戦いに自らの使命を見出す。

☆ 「限りある命が虚しいのではない。限りある命ゆえに輝かしいのだ。武士道はそれに尽きる。生きよ」(345頁)

☆ 息子に残したこの言葉が心に残る。
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浅田次郎「西を向く侍」

2019-10-20 19:12:15 | Weblog
☆ 浅田次郎さんの「五郎治殿御始末」(新潮文庫)から「西を向く侍」を読んだ。

☆ 暦と言えば冲方丁さんの「天地明察」を思い浮かべるが、「天地明察」が4代将軍徳川家綱の時代の物語であるのに対して、西を向く侍」は明治初期が時代背景となっている。

☆ 算術と暦学を修めその学識が評判の成瀬勘十郎。徳川の治世なら御徒士としてその才覚がいかされたであろうが、明治維新で幕臣の多くはリストラされ、彼もまた待機組に据え置かれた。

☆ そんな折、明治5年12月2日をもって太陰暦から太陽暦に暦が変わるという詔勅が出された。あまりの性急な変革に、成瀬は血相を変え文部省へと向かった。


☆ 今さらながら考えてみれば、なぜ「大の月」は1月、3月、5月、7月、8月、10月、12月なのであろうか。どうして2月は28日(閏年であっても29日)なのだろうか。明治政府が採用したグレゴリオ暦がそうなっているから仕方がないということなのだろうか。

☆ 小学生の頃、「小の月」を覚えるのに先生が「西向く侍=二、四、六、九、士(十一)」と教えてくれた。それがこの作品のタイトルの所以であろうが、同時に西洋ばかりに目を向ける薩長政府への批判も込められているように感じた。 
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映画「アラジン」

2019-10-20 13:32:16 | Weblog
☆ 映画「アラジン」(2019年)を観た。ディズニー映画らしいエンターテインメントだった。

☆ ストーリーは「アラジンと魔法のランプ」の通りだろうか。幼い頃に読んだか聞いたかで、ストーリーははっきり覚えていない。「アリババと40人の盗賊」や「シンドバッド」とごっちゃになっている。

☆ とにかく、歌あり、ダンスあり、バトルありで、特撮が駆使されビジュアルが素晴らしかった。キャストも素敵だったなぁ。ジャスミン役のナオミ・スコットさん、美しい。インド系の人はきれいだね。ジーニー(魔人)役のウィル・スミスさんは役にピッタリだった。アラジン役のメナ・マスードさんは初めて見た。ダンスが軽やかだった。猿のアブーは名演技だった。本物なのか作り物なのかわからなかった。

☆ 塾生の評価が高かったので観てみたが、楽しめた。

☆ 「これでもかー」というぐらいのハッピーエンド。映画ぐらいハッピーエンドでないとね。
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不射之射

2019-10-20 10:11:40 | Weblog
☆ 伊坂幸太郎さんの「アイネクライネナハトムジーク」(幻冬舎文庫)から「ルックスライク」を読んだ。その中で、中島敦の「名人伝」が取り上げられていたので改めて読んだ。短い作品だが、学ぶところが多い。

☆ 紀昌という弓矢の名人の話。紀昌は最初、天下第一と言われる飛衛に弟子入りする。厳しい修行の後、もはや師匠の飛衛のほかに自らを超えるものがいないことを悟る。天下第一となるためには飛衛を亡き者にするしかない。紀昌は飛衛を襲うが、そこは飛衛、紀昌の矢をかわし難を逃れる。

☆ 策略が失敗し己の非を恥じた紀昌、紀昌の襲撃を回避した己の技量に満足した飛衛、この両者は涙のうちに抱擁する。命のやり取りをした者が抱擁するシーンは俗人には理解しがたい。

☆ とはいえ、身の危険を感じた飛衛は紀昌を遠ざけるべく新たな師匠を紹介する。甘蠅と呼ばれるその人物は人里離れた山岳で仙人のような暮らしていていた。紀昌の弓の技を見て、評価はするがそれはまだ「射之射」であると言う。紀昌の前で甘蠅は「不射之射」を披露する。弓矢もなく高く飛ぶ鳶を射落としたのだ。

☆ 9年の修行を経て町に下りてきた紀昌。それは「木偶の如く愚者の如き容貌にかわっていた」という。名人芸を所望する人々に対して、紀昌は生涯二度と弓を引くことがなかったという。「弓を執らざる弓の名人」として喧伝され、さまざまな伝説が生まれる。

☆ しかし当の紀昌にとっては、そんなことはどうでもよい。「既に、我と彼との別、是と非との分を知らぬ」心境だという。弓矢というものさえ忘れてしまったようだ。


☆ 山奥での修業は人知を超えるものであったのだろう。その無表情と言い、感情の喪失と言い、今の時代で言えば認知症だ。名人の極致というのは、人を超えることだったのだろうか。

☆ 物事を知識や理屈で捉えているうちはまだまだ未熟。あるがままにして真理に到達した境地、「我と彼と別なく」と言われるように依正不二の境地、それは凡人には空想でしかないが、それが名人の境地なのであろう。
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浅田次郎「箱館証文」

2019-10-19 15:49:03 | Weblog
☆ 浅田次郎さんの「五郎治殿御始末」(新潮文庫)から「箱館証文」を読んだ。

☆ 江戸から明治と変わり、急速な西洋化が進む。同じ武士でも維新の勝者と敗者では進む道が大きく異なった。

☆ 元徳島藩藩士大河内厚、今は明治政府の工部少輔の地位にある。ある日曜日、彼のもとを警視庁の警部と名乗る男が訪ねてくる。彼は、かつて箱館戦争の折、斥候であった大河内の命を助け、その際、その代償として一千両支払うという証文を書かせたという。

☆ 困った大河内は返答を1週間先延ばし、剣術の師匠に相談するのだが、証文が飛び交う大騒動に。シリアスだが、途中は吉本新喜劇のようなコミカルさも感じた。最後は大団円。

☆ 森鷗外の「普請中」という感じで、時代の急変に右往左往する人々、その中でも生き残る人情、ささやかな武士道。そんなものを感じた。
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