じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

短編3作

2019-10-18 19:45:57 | Weblog
☆ 東野圭吾さん「犯人のいない殺人の夜」(光文社文庫)から「踊り子」を読んだ。

☆ 英語塾帰りの中学生、近くの高校の体育館で新体操の練習をしている女性を見かける。いわゆる、一目ぼれ、ちょっと年上のお姉さんへのあこがれといった感じ。この出会いは、映画「小さな恋のメロディー」で、メロディーのダンス姿に一目惚れをしたマーク・レスターのようだ。

☆ しかしこの作品は映画のようにホットには終わらない。男の子の罪のない行為が悲劇をもたらす。不運だとしか言いようがない。


☆ 有栖川有栖さん「ペルシャ猫の謎」(講談社文庫)から「わらう月」を読んだ。

☆ 殺人のアリバイ工作。紀伊半島とシドニー、一方が北緯34度で他方が南緯34度って初めて知った。有栖川さんは月に関係が深いという。


☆ 朝井リョウさん「少女は卒業しない」(集英社文庫)から「エンドロールが始まる」を読んだ。

☆ 卒業と同時に廃校となる高校。図書館を舞台に先生と女子高生のほのかな愛の物語が始まる(いや終わるのかな)。連作短編なので、読み進めれば物語が広がっていくのであろう。同時に読んでいる島本理生さんの「ナラタージュ」(角川文庫)はだんだんドロドロしてきた。 

 
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職員室カースト

2019-10-17 10:42:40 | Weblog
☆ 京都新聞の社説、神戸市立小学校教員間のいじめ問題をとりあげ、「職員室カースト」という言葉を使っていた。

☆ もともとは子どものいじめ問題で語られた「スクールカースト」、それが援用されたようだ。最近は、教育評論家の言葉からも多く聞かれるようになった。

☆ ハラスメント問題は教員社会に限ったことではない。教員社会の問題として語られなかったのが今さらながら不思議なくらいだ。

☆ 今回、勇気ある告発によって問題が暴露されたが、これまでも泣き寝入りした多くの人々がいたのではないかと危惧する。一方で教員社会が、あるいは教員個人の資質が変わってきているのかも知れない。

☆ かつては「ナベブタ式」と呼ばれ、校長をトップに教員がそのキャリアに関係なく一様にその職責を果たすのが教員組織だった。専門職としての教職が目指され、「個業」としての矜持をもちつつ、「協業」として教育目標を実現させる、そのために学校経営が機能していた。教員に対しては、大前提として性善説に立ち、主義主張や人間関係の摩擦はあっても、教育目標の実現に向け協力するものだと考えられていた。

☆ しかし、時代の変化の中で、学校に次々と新たな課題が課せられ、コロコロと変わる教育政策に振り回され、教員組織においても職階制が浸透してきた。主事であったり指導教諭であったり。かつての重層構造ー単層構造論争など懐かしい限りだ。職階(キャリアラダー)やメリット・ペイは、単線系(教諭→(主任)→教頭→校長の道しかない)の教員の職能成長にとって、刺激剤となるはずだったが、果たしてどうなのだろうか。

☆ 子どもたちに対しては、異年齢集団や斜めの関係の重要性を説きつつ、教員集団において多様な集団との関りは実現されているのであろうか。

☆ 昔ながらの学校の閉鎖性も気になる。「開かれた学校」などと言われて数十年がたつ。不審者問題で学校の校門が閉められるようになり、地域など他者からの視線を遠ざけてはいないか。行政の締め付けによって校長が委縮し、臭いものに蓋といった隠蔽体質に陥っていないか。この傾向は行政の方がもっと強いように感じるが。

☆ 以前、ある研究会に参加したとき、現役の教員が「行政というものは『敗退』を認めない。『敗退』を『転戦』と誤魔化したかつての日本軍と同じだ」と言っていたのが印象に残っている。結局、無責任体制が温存され、初期対応が遅れる傾向にある。

☆ 教員の幼稚化や人事のあり方も課題だ。ある週刊誌は「女帝」とその取り巻きと言った視点に立っているが、前校長によってリクルートされた女性教員のチカラ、それと教頭として転任し、校長に昇格した現校長との関係はどうだったのか。

☆ 森田洋司・清水賢二著「いじめ 教室の病い」(金子書房 1986年)では、いじめ集団の四層構造(加害者、被害者、観衆、傍観者)を指摘している。教員集団にも当てはまるのであろうか。

☆ 今回の問題は見かけ以上に根深く、現代の教育、教育行政、学校経営の在り方に一石を投じそうな気がする。また徹底に究明することによって今後の学校改善、教育改革への糸口になりそうな気もする。時代の移り変わりに「学校」(あるいは教育行政のありかた)という仕組みが機能障害を起こしつつあるのかも知れない。
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宮部みゆき「我らが隣人の犯罪」

2019-10-16 21:40:23 | Weblog
☆ 宮部みゆきさんの「我らが隣人の犯罪」(文春文庫)から表題作を読んだ。

☆ 中学1年生の男の子が話者。両親の仕事の都合で転居した先は、三世帯が1単位のタウンハウス(つまり1戸建てを3軒に間仕切りしたもの)。男の子たちの住居はその真ん中。

☆ 隣には女性が一人暮らし。いわゆる「特殊関係人」(この言葉は「マルサの女」で知ったという)らしい。困ったのは彼女が飼っている犬。ストレスのためか、鳴き声がうるさくて仕方がない。夜も寝られず、妹は病気がちになってしまった。

☆ 早々に転居もできず、「僕」は叔父さんと「ある犯罪」を実行する。


☆ 作品では笑って終わっているけれど、結構危ない橋を渡っている気がする。良い子は真似をしないように。
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横山秀夫「第三の時効」

2019-10-16 18:10:01 | Weblog
☆ 横山秀夫さんの「第三の時効」(集英社文庫)から表題作を読んだ。3重にも4重にもトリックが仕組まれていた。

☆ エアコンを取り付けに来た男が、主婦を性的に暴行、その現場を見た夫が男と格闘するが逆に殺害されてしまう。男は逃走し、15年の時効を迎える。それが「第1の時効」。しかし、それにはトリックが。

☆ 「第2の時効」そしてびっくりしたのが「第3の時効」。しかし、それでも終わらない。更に大どんでん返しがあった。このあたりは多くは語れない。

☆ ところで殺人の時効は、2010年に廃止されたんだったかな。今なら成り立たないトリックだけれど。
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松本清張「証言」

2019-10-16 16:45:30 | Weblog
☆ 松本清張さんの「黒い画集」(新潮文庫)から「証言」を読んだ。

☆ 48歳、課長の男。妻には内緒で22歳の女性を愛人としている。二人の関係が暴露されれば、家庭は崩壊、会社にもいられなくなる。男は細心の注意を払って交際を続けていたはずだった。

☆ ところが、愛人宅から帰る途中で、知人と出くわしてしまうのである。

☆ 知らぬ存ぜぬで通そうとしたのだが、悪いことはできないものだ。

☆ 政治家のように「記憶にございません」と言えば良かったものを。

☆ 「人の嘘には、人の嘘が復讐するのであろうか」で、作品は締めくくられている。
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柳広司「ジョーカー・ゲーム」

2019-10-16 03:24:59 | Weblog
☆ 柳広司さんの「ジョーカー・ゲーム」(角川文庫)から表題作を読んだ。面白い作品だった。

☆ 太平洋戦争、いや日中戦争直前、陸軍の中にスパイ養成所がつくられることになった。それは「D機関」と呼ばれた。当時の日本陸軍は諜報活動を潔しとせず、養成所を立ち上げた結城中佐には冷ややかな視線が送られていた。ミスでもあろうものなら養成所をつぶそうと。参謀本部はD機関との連絡係として佐久間中尉を派遣する。彼がこの物語の語り手となる。

☆ このストーリーを読んで思い出すのが映画「陸軍中野学校」のシリーズだ。結城中佐役は加東大介さん、佐久間中尉役は市川雷蔵さんというところだろうか。

☆ アニメも観ていたので、それを確認するように読めた。
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有栖川有栖「ジュリエットの悲鳴」

2019-10-15 17:53:37 | Weblog
☆ 昔、「万華鏡」という曲で、女性の声のような異音が聞こえる、心霊現象ではないかと話題になった。

☆ 有栖川有栖さんの「ジュリエットの悲鳴」(角川文庫)から表題作を読んだ。

☆ 人気のロックバンド「トラジェティ」、そのボーカルの「ロミオ」。記者らしき君原由理枝が彼にインタビューする形で物語は進む。

☆ 彼らの曲に女性の悲鳴らしき音が入っているというのだ。しかしそれを質問するのはNG。由理枝もあえて避けていたのだが。

☆ コンサートが終わり疲れていたせいか、由理枝への信頼があったせいか、それとも言い残しておきたかったのか。ロミオは「ジュリエットの秘密」について語り始める。

☆ シェークスピアの物語を踏まえながら、「運命」を感じさせられる作品だった。最後は、「これからどうなるのか」と思わせる終わりかただった。 
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米澤穂信「満願」

2019-10-14 23:49:17 | Weblog
☆ 米澤穂信さんの「満願」(新潮文庫)から表題作を読んだ。

☆ 推理小説なのだろうが、殺人はあくまでドラマの1ピースのように感じた。とてもドラマチックな作品だった。

☆ 主人公は弁護士。彼の回想として描かれている。時代は大きく3つに分かれる。彼が法学生だった時代。駆け出しの弁護士だった時代。10年の歳月を経て一人前の弁護士となった時代。

☆ 彼は法学生時代、ある畳屋の二階に下宿していた。その畳屋の主人は無口で人づきあいの悪そうな人だったが、奥さんはとてもよくできた人だった。彼女は苦学生にとても良くしてくれた。

☆ 彼は司法試験に合格し、若手弁護士として独立する。下宿を出て既に数年が過ぎていた。下宿屋の奥さんが殺人で捕まったのを知って、彼は弁護を買って出る。

☆ そして時代が流れ、刑期を終えた奥さんからの電話。作品はそこから始まり、時代をさかのぼっていく。

☆ とてもリズミカルな文章。人物がイメージできる作品だ。読者を引き込むのは、文章のうまさ、構成の技だろうね。
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映画「バルカン超特急」

2019-10-14 23:38:59 | Weblog
☆ 映画「バルカン超特急」(1938年)を観た。

☆ ヨーロッパの架空の国。そこを走るバルカン超特急。その列車からイギリス人の老婦人が消える。彼女を知る女性が探すも乗客も乗務員も知らないの一点張り。彼女はどこに消えたのか。あるいはそもそも彼女は存在しなかったのか。

☆ 話が進むにつれて、国際的な陰謀が明らかになっていく。

☆ 当時としては最先端の特撮を駆使してつくられている。隣の車両に移ろうと車外に出た乗客が、対向列車に遭遇する場面など臨場感がよく出ている。

☆ 前半は少々退屈だ。それは何かにつけ現代の時間の流れが、80年前よりも早くなったせいだろうか。(寿命が延びた分、時間の進み方が早くなったのかも知れない。一種の相対性原理かな)
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連城三紀彦「桔梗の宿」

2019-10-13 12:40:07 | Weblog
☆ 連城三紀彦さんの「戻り川心中」(光文社文庫)から「桔梗の宿」を読んだ。切ない推理小説だった。

☆ 昭和3年、朽ちたような遊郭が舞台。貧しさゆえ売られた少女たちが、夜ごと男の欲望のはけ口にされる街。その街の泥で淀んだどぶ川に死骸が浮かんだ。手には桔梗の花を握りしめ。

☆ 捜査には2人の刑事が当たった。話者はそのうちの一人、25歳になる若い警察官だった。

☆ 単純な強盗事件と思われたが、容疑者を追っていくと、黒衣のようなその人生が浮き彫りになってくる。その男を客にとった若い(16歳だという)遊女。刑事は彼女の聞き込みをするが、何も話さない。何かを隠しているようだ。

☆ 警察官は客として彼女から真実を聞こうとするのだが・・・。

☆ 暗い時代背景、その底辺に追いやられた人々。死臭漂うような希望のない日々に少女が見つけた小さな灯り。たとえそれが悲劇に終わろうとも。桔梗の花、花火、人形、小道具が連城さんの美しい文体の中で操られていく。

☆ 演歌「籠の鳥」、「八百屋お七」、盛りだくさんに色を添えていく。
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