はがき随筆の8月度月間賞は次の皆さんでした。
【優秀作】24日「残務整理」宮路量温=出水市中央町
【佳作】3日「出産のとき」中馬和美=姶良市加治木町
▽4日「お田植え祭」古井みきえ=出水市下知識町
「残務整理」は、私たちにとって、死後何を残すか残さないかというのは大問題です。さらりと書かれた文章ですが、考えさせられます。普通は、動産や不動産へと意識が向きますが、それが後々迷惑をかけないようにと、大木になってしまったネムの木を切り切り倒すことにしたというのは、ご夫婦の愛着と思いこもった樹木だけに、文字通り身を切られる思いだったことでしょう。
「出産のとき」は、娘さんの出産に伴う感激が素直に描かれた文章です。難産だったことの心配、遠くから駆けつけて出産に立ち会うムコドノの優しさ、妻の出産時には夫として大した役目も果たさなかった自分への反省など、一つの生命の誕生は、多くの感慨をもたらしたようです。
「お田植え祭」は、近くの神社のお田植え祭に、早乙女姿で子供たちと参加したときの印象が鮮やかに描かれています。水田に裸足を漬けた瞬間の子供たちとの感覚の違い、不ぞろいな苗の行列、終了後のおにぎりのおいしさなど、ある世代には、確実によみがえってくる時間と空間が呼びもどしてくれる感受です。
この他に3編を紹介します。
堀之内泉さんの「石文」は、洗濯のとき子供のポケットを探ると、大人には無意味でもいろいろの宝物が出てくる。ひところ小石が出てくることがあった。今にして思えば、あの小石は子供からのメッセージだったかもしれない。捨ててしまって残念ではあった。
森孝子さんの「消し炭」は、子供のとき、いとこと木炭を食べたときの思い出です。
確か車谷長吉の小説に都会へ働きに出る子に、炭俵を一俵持たせていく話がありましたが、それを読んだときも驚きましたが、今度も驚きました。「食の先端を行っていた」という結びがいいですね。
山岡淳子さんの「アサガオ」は、朝顔の美しさが目に見えるように描かれている文章です。雨よりも日光が似合う花、朝一番にオハヨウと元気づけてくれる花、それにしても、アサガオとは誰が名づけてくれたのでしょうか。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦
【優秀作】24日「残務整理」宮路量温=出水市中央町
【佳作】3日「出産のとき」中馬和美=姶良市加治木町
▽4日「お田植え祭」古井みきえ=出水市下知識町
「残務整理」は、私たちにとって、死後何を残すか残さないかというのは大問題です。さらりと書かれた文章ですが、考えさせられます。普通は、動産や不動産へと意識が向きますが、それが後々迷惑をかけないようにと、大木になってしまったネムの木を切り切り倒すことにしたというのは、ご夫婦の愛着と思いこもった樹木だけに、文字通り身を切られる思いだったことでしょう。
「出産のとき」は、娘さんの出産に伴う感激が素直に描かれた文章です。難産だったことの心配、遠くから駆けつけて出産に立ち会うムコドノの優しさ、妻の出産時には夫として大した役目も果たさなかった自分への反省など、一つの生命の誕生は、多くの感慨をもたらしたようです。
「お田植え祭」は、近くの神社のお田植え祭に、早乙女姿で子供たちと参加したときの印象が鮮やかに描かれています。水田に裸足を漬けた瞬間の子供たちとの感覚の違い、不ぞろいな苗の行列、終了後のおにぎりのおいしさなど、ある世代には、確実によみがえってくる時間と空間が呼びもどしてくれる感受です。
この他に3編を紹介します。
堀之内泉さんの「石文」は、洗濯のとき子供のポケットを探ると、大人には無意味でもいろいろの宝物が出てくる。ひところ小石が出てくることがあった。今にして思えば、あの小石は子供からのメッセージだったかもしれない。捨ててしまって残念ではあった。
森孝子さんの「消し炭」は、子供のとき、いとこと木炭を食べたときの思い出です。
確か車谷長吉の小説に都会へ働きに出る子に、炭俵を一俵持たせていく話がありましたが、それを読んだときも驚きましたが、今度も驚きました。「食の先端を行っていた」という結びがいいですね。
山岡淳子さんの「アサガオ」は、朝顔の美しさが目に見えるように描かれている文章です。雨よりも日光が似合う花、朝一番にオハヨウと元気づけてくれる花、それにしても、アサガオとは誰が名づけてくれたのでしょうか。
鹿児島大学名誉教授 石田忠彦