「まさか」は突然来る。夕食後のトレイを手に後ずさりした妻が足をすべらせ、日のついていない丸型ストーブを背中にしたたかに打ちつけ転倒した。床に横たわったまま動けず、痛みを訴え泣き叫ぶ。救急車を呼ぶ。「赤信号でも突っ切りますし、スピードも出しますから」という救急隊員の説得を聞き流し、その後を追う。
夜のとばりに包まれた景色が次々と後方へ走り去る中、山を下り市街地へ入った。信号は赤! 遠ざかる赤色ランプを目で追いながら、あの世の友と父に祈った。「どうか助けてください。どうか助けてください」
鹿児島県霧島市 久野茂樹(69) 2018/12/31 毎日新聞鹿児島版掲載
夜のとばりに包まれた景色が次々と後方へ走り去る中、山を下り市街地へ入った。信号は赤! 遠ざかる赤色ランプを目で追いながら、あの世の友と父に祈った。「どうか助けてください。どうか助けてください」
鹿児島県霧島市 久野茂樹(69) 2018/12/31 毎日新聞鹿児島版掲載