秋の日の緑地公園では子供たちが虫とりに興じていた。
その中に近所に住む幼稚園児のK君もいて、上手に虫を捕っている。ところが一人の男の子は頑張っているのに、虫カゴは空のまま。それを見ていたK君、一生懸命アミを振り1匹のバッタを捕まえると男の子の虫カゴに入れてやった。
そしてホッとした様に笑顔をみせた。心が震えた。
今、寒い公園には誰もいない。
でも、秋の日のあの光景は今もそこにあって通るたびに聞こえてくる。「優しい心を忘れないで」と、かわいい幼子からのメッセージだ。
宮崎県延岡市 橋本京子(76) 2020/1/1 毎日新聞鹿児島版掲載