はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

藍色の馬

2010-01-21 16:41:29 | はがき随筆
はしごの下りた大瓶が幾つか庭に埋めてあった。紺屋だった祖父の藍染め用の瓶で、幼いころ近づくのが怖かった。くず糸をもらってよく野球ボールを作った。今も藍色に染まった指先を思い浮かべることが出来る。
 隠居した祖父は9歳の私に将棋を教えて相手をさせた。私は面白くて夢中になった。熱戦が終わると「じいちゃん馬の絵を描いて!」とねだった。すると祖父は鉛筆をなめなめ様々な馬の姿を描いてくれた。
 30歳の時、私は初めて野性の馬を描いた。以来ずっと描いている。鈍く藍色に光る馬がなぜか私をとらえて離さないのだ。
  出水市 中島征士(64) 2010/1/19 毎日新聞鹿児島版掲載

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