はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

公園のハモニカ

2010-05-30 22:13:04 | はがき随筆
  夕暮れを少し長く感じ出す季節のころ。近くの公園からセンダンの香りとともに、ハモニ力の音色が我が家に届きだした。
 一日の疲れを流す風呂場にも聞こえてくる。「月の沙漠」など哀愁を帯びた懐かしいメロディが流れる。風呂の壁にジンタのように響く。シワやシミの増えた体を洗い、湯船に浸かって耳を澄ませていた。心に少年時代の温かさがしみてきた。
 ゴーールデンウイークの喧騒が過ぎた時。少し猫背気味にして、ハモニカを吹きながら公園の中を歩いていた初老の男の姿が消えた。春のトワイライトタイムの夢うつつのように。
  鹿児島市 高橋誠(59) 2010/5/30 毎日新聞鹿児島版掲載

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