はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

わっはっはっ

2012-09-25 11:50:39 | はがき随筆


 熱帯夜が明ける。開け放たれたカーテンの向こうで、十数輪の淡い紫色の朝顔の花が「おはよう」の声をかけてくれる。そのかれんな花も数時間のうちにしぼみ、先ほどの清らかな姿はもうない。朝顔はたくさんの種を宿し満足なのだ。やがて無数の種は地面に落ち、来年の夏には確実に清らかな顔を見せる。
 古希は迎えたが、この世に残した物など何もない。無為に70年を過ごしただけか…。
 「いや、違う。2人の子供を育て、孫までいるじゃないか。次への命をつないだではないか、凡人三男万歳! これで上出来だよ」と一人高笑いする。
  肝付町 吉井三男 2012/9/24 毎日新聞鹿児島版掲載

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