母が施設に入所して6年目の春。昨年の秋までは笑顔で名前を呼び歓迎してくれた。今「お姉ちゃん」としか言えない。娘だと認識できているのか疑問だ。記憶を手繰り寄せられずに困惑顔の母。誰だか分からないのか?
間違いを訂正すると、ばつが悪そうだ。思い出せなくて残念なのは当の本人なのだから、これ以上、反応を探るのはやめよう。面会の度に試され可哀そうになった。識別できなくてもよしとしよう。現実を受け入れると少しは気が楽になった。あと少し頑張ってほしい。母の好きな沈丁花、優しい香りが心地よく辺りを包んでくれた。
鹿屋市 中鶴裕子 2018/3/29 毎日新聞鹿児島版掲載
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