はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

消えた時計

2014-07-27 23:00:52 | はがき随筆
 昨年夏のこと。娘と結婚式場へ向かう途中、ふと見た腕の中から時計が消えている。「あれっ、ない」。一瞬心臓が止まりそうでぼうぜん自失。その場で大泣きしたい衝動に駆られた。娘は引き返し、探しに行ってくれたが、足取りは重かった。それは、亡き夫とのペアの時計。余りのショックに悲しさで頭の中は空っぽ。どんな慰めの言葉も上の空。ため息ばかりの時間が流れ、さまざまな思いが脳裏をよぎる。そんな中、「仕方がないがねぇ」と夫の声が聞こえたようだ。「お父さーん」と心の中で叫び、涙があふれてきた。
  鹿児島市 竹之内美知子 2014/7/20 毎日新聞鹿児島版掲載

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