14号は近づきつつあった。強弱を繰り返しながら吹きつける風は台風の前奏曲だ。最接近は今夜から明日の未明、散歩はまだ大丈夫。日曜の朝、そう判断して、いつもの谷へ向かった。
⏤⏤5分で入り口に着いた。ぬれた道に赤紫いろの小花が散らばっている。この先は杉と竹の林が続いて、10分もあるくと行き止まりになる。
突然、バーン、バーン。数㍍先で爆発音がした。大杉の間の古竹が次々に
倒れていく。怖!
ほうほうの体で逃げ帰った。「こんな時に谷に行ってぇ。田んぼに行ったと思ちょったわ」。夫の小言がうれしかった。
宮崎県延岡市 佐藤桂子(74) 2022.10.8 毎日新聞鹿児島版掲載
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