ギュイーン、トントン、シャポシャポ。待つこと数分。「お待たせしました。ブラジルです」。カップを手に目を閉じ、まずは香りを。豊かな芳しさに脳細胞がふわりと ゆるむ。次にひと口。一瞬鳥肌がたち、雑味のない軽やかな苦みが広がる。そして舌に残るのはほのかなフルーツの味。日常から離れるため、時折、珈琲店に身を置く。一杯だけのために豆を挽き、丁寧にドリップされる珈琲。プロが淹れるとこんなにも味わい深くなるものなのだ。飲み終える頃には背筋がスッと伸びる。
外に出ると雨も上がり、薄日がさしてきた。
宮崎市 四位久美子 2018/7/5 毎日新聞鹿児島版掲載
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